国内

職場、学校、近所付き合いでも「コロナハラスメント」が横行

コロナ差別はよくないと誰もが理解しているはずだが。写真は愛知県豊川市・豊川青年会議所による新型コロナウイルスの感染者や濃厚接触者への差別をなくすためのキャンペーンポスター(時事通信フォト)

コロナ差別はよくないと誰もが理解しているはずだが。写真は愛知県豊川市・豊川青年会議所による新型コロナウイルスの感染者や濃厚接触者への差別をなくすためのキャンペーンポスター(時事通信フォト)

 新型コロナウイルスに関わる差別・偏見をなくそう、と聞けば、反対する人はいないだろう。ところが現実には、以前から続く職場などでのハラスメントを背景に、差別や偏見に基づいた歪んだ言動がまかり通っている。ライターの森鷹久氏が、職も人間関係も、ご近所付き合いも、コロナをきっかけに広がるハラスメントによって壊れつつある現実をレポートする。

 * * *
 もはや誰の目にも明らかになった、新型コロナウイルス感染拡大の「第三波」。今年3月ごろから始まり、夏頃「第二波」を経て一度は収束に向かったように見えた。ところが、一年の中で一番寒く乾燥する「ウイルス感染」が起きやすいシーズンにさしかかり、新規感染者数が増え始めると、テレビや新聞では悲観的な見解があふれ出した。

 こうした空気は、すでに市民の間にも蔓延し、日常生活に小さくない悪影響を及ぼしている。まだ誰も言わないが、さまざまな場所で「パニック」が起きているのではないか? さらに、それを見逃したり、意図的に見ようとしないことで、近い将来、大きなパニックを呼び込むことにならないか。

「飲食店というサービス業のため、リモートワークはどうしてもできない。怖いながらも働く私たちに、店長は『ごめんね』と声をかけてくれて、万が一、コロナに感染したとしても『誰のせいとかではなく仕方のないこと』と言って励ましてくれました」

 東京都内のレストランチェーン勤務・森野裕子さん(仮名・30代)は今年7月ごろ、店長から優しく声をかけられたことを思い出す。売り上げは前年同月比の半分以下、残業がないから残業代も出ず、少ないながらも毎年10万円程度は出ていた業績連動型のボーナスも支払われることはなかった。それでも、優しい上司がいるし、仕事がない人に比較すればマシ、衣食住が欠けているわけでもない。「コロナさえ収束すれば」と前向きだった。

 ところが今年11月、同僚のコロナ感染が発覚。家族が感染していたことから、検査によって同僚の感染も判明したというパターンで、森野さんや数人の従業員、そして店長も「濃厚接触者」となったのである。すると、店長は豹変した。

「従業員の感染を本社に言うなと店長が私たちに口止めし、隠蔽しようとしたんです。そんなことできないと言うと、今度は会社の常務という人から電話がかかってきて、店の消毒代、休業期間中の損失は全て従業員に補填させるなどと言い始めたんです」(森野さん)

 優しかった店長の姿はそこになく、感染した従業員、そして森野さんたちが「いかに怠惰か」という嘘の釈明を延々と常務に続けたのである。責任回避、自分だけは会社に残りたい、そんな意図が店長にあったかはわからない。だが、感染した従業員は自主的な無給の休業を強いられ、反発しようものなら退社を仄めかされる。感染した同僚は、電話口で泣きながら森野さんに詫びたという。

「10年以上勤務してきた私達にこの仕打ちかと絶望し、店の従業員の8割が辞めました。表向きはコロナによる営業縮小と発表されていますが、実情は違う。今はもう、何も信じられません」(森野さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン