豊洲市場では急速に感染が拡大している(共同通信社)
もちろん危険にさらされているのは中国だけではない。新型コロナが付着した輸入冷凍食品は、当然、日本国内にも入っている可能性がある。
日本の「食」文化の一大中心地である東京・豊洲市場で新型コロナ感染が広がっている。8月15日に最初の感染者が出て以降、これまでの感染者数は合計160人。特に11月に入ってからの急増が目立ち、都の担当者によれば9割が感染経路不明者だという。
「感染は散発的で因果関係がはっきりしていません。そのため都はクラスターとは判断せず、なぜ市場に感染が広がっているかの正確な研究や分析も行われていない。しかし、豊洲には世界20か国以上から冷凍の水産物や加工品が集まってきます。感染源として、輸入冷凍食品を疑ってみる必要があるのではないか」(全国紙社会部記者)
食品問題評論家の垣田達哉さんはこう語る。
「豊洲市場など、市場関係者に感染者が多いのは非常に心配な状況です。冷凍食品をはじめ、市場が扱う品目をすべて警戒する必要がある」
中国以上に危ないアメリカと南米
「輸入冷凍食品が危ない」といっても、充分な感染対策が取られている工場で加工されたものなら、それほど心配はない。だが、残念ながら世界中を見渡すと対策が不充分なケースが少なくない。輸入食品に詳しいジャーナリストの小倉正行さんが言う。
「例えばアメリカの大手食品工場では、主にメキシコ人たちが『3密』どころではないほど劣悪な環境で作業している。クラスターが発生していても不思議はありません」
垣田さんも指摘する。
「日本では2008年に発覚した“毒入り餃子事件”などの影響で、“脱中国”の流れが進み、ブラジルやアルゼンチンなどからの輸入が増えました。しかし、それらの国では中国以上に衛生管理がずさんな食品加工現場も多い。また、衛生状態とは別にアメリカやヨーロッパなど、感染者数が多い国からの輸入品もリスクが高いといえるでしょう」
ウイルスが付着した輸入冷凍食品が国内に入ってきた場合、食卓までの流通経路はすべて感染リスクにさらされる。
「最も危ないのが、冷凍食品を原材料として加工するタイミングです。スーパーで売られている冷凍魚介類や肉類は、輸入元で梱包された発泡スチロールの状態で持ち込まれ、従業員が店舗のバックヤードで小分けするので、そこで感染する危険性も高い。そう考えると、食材を触る機会が多い、焼肉店やステーキ店の店員、寿司職人などにもリスクがある」(垣田さん)
一般消費者も安全とはいえない。スーパーなどで売られている冷凍食品のパッケージにウイルスが付着していれば、それを触ることで感染する可能性がある。冷凍食品の中身にウイルスが付着していれば、調理の際も危険になる。
「加熱調理すればリスクは減るでしょうが、そうでないものは危ない。コンビニで人気の『サラダチキン』のように開封してそのまま食べるものは、輸入品なら危険性が増えます」(垣田さん)
小倉さんが続ける。
「中国で検出されたえびなどの海鮮系や豚肉、鶏肉、牛肉などのほかに、冷凍野菜も危険。冷凍野菜は国内流通の9割を輸入品が占めており、感染者数が急増しているアメリカからの輸入が多いんです」
※女性セブン2020年12月24号
アメリカから輸入品にも要注意(写真/アフロ)