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笑福亭羽光 多層構造に抒情SF…創作落語の可能性を広げる

笑福亭羽光らしい新作落語に注目

笑福亭羽光らしい新作落語に注目

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、2020年度NHK新人落語大賞を受賞した笑福亭羽光に関するコラムをお届けする。

 * * *
 2020年度NHK新人落語大賞の決勝が11月2日に行なわれ、笑福亭羽光が大賞を受賞した。

 羽光は1972年生まれの48歳。大阪府高槻市出身で、大学卒業後16年間漫才・コント等のお笑い芸人として過ごし、2007年に落語芸術協会の笑福亭鶴光に入門。2013年には芸協二ツ目ユニット「成金」に参加した。来年5月には真打昇進が決定。上方の古典の他に新作落語も手掛けており、今回NHKで大賞を獲ったネタも自作の『ペラペラ王国』だった。

『ペラペラ王国』は多層構造のメタ落語。孫を寝かしつけるために話を聞かせようとした祖父が、「展開が読めない話がいい」と言われて「会社員時代に部下と雪山で遭難した話」を始める。回想シーンの中で部下の田中が眠らないように「昔デートしたときの話」を始める祖父。その回想で祖父は彼女に「大学時代、母校の高校でスピーチをした話」を始める。回想の中で祖父は在校生に「大学の探検部でペラペラ王国に行ってペラペラザウルスが出てきた」冒険譚を話し始め、回想へ……。

 祖父が田中や在校生に「寝るな」と言い続けるので眠れない孫は、どの回想シーンにおいても時間切れでペラペラ王国の話の結末が語られていないと指摘。「僕は現実に生きてるから『時間がない』とは言わせないよ」と続きを話させようとするが、祖父は「これが落語だったらどうする?」と、さらにメタな展開に持っていってオチへ。回想の中で田中が「この話の構造、立川吉笑みたいですね」と指摘するのが楽しい。

 この『ペラペラ王国』という噺は「渋谷らくご」で偶数月に開催される創作落語ネタおろしの会で2018年に披露されたもので、羽光はこの年の創作大賞を受賞している。

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