2020年2月、新型コロナウイルス感染拡大し始めていた中国で春節(旧正月)の大型連休が始まり、多くの観光客が日本を訪れた(時事通信フォト)
乱暴な言葉と聞こえるかもしれないが社長の言いたいことは市井の「経済をとる」派にとっては当然の言い分だろう。2020年10月の就業者数は6694万人、2019年と比べて93万人減った。7ヶ月連続の減少でそのままコロナ禍の期間とリンクする。そのうち非正規労働者は2111万人、主婦のパートや学生アルバイトも含まれているとはいえ、もはや日本という国は働く人の三分の一が非正規だ。完全失業者数は215万人で2019年に比べて51万人増えた。コロナ解雇や雇い止めは12月11日時点で7万6543人(厚生労働省)、ここで注目すべきは業種別で、一番多いのが製造業の1万5310人とわずかの差だが飲食の1万902人や小売の1万272人、宿泊業9542人を上回っている。このままいけば来年度には産業全体に及ぶだろう。それはそっくりそのまま正規にも、非正規にも関係なく及ぶ。
「いつ終わるか、薬ができるかわからないコロナで困窮して死ぬなんて私は嫌ですね。国も嫌だと思いますよ。だからGoToトラベルだって延長そのものは撤回してないでしょう」
なんと政府はGoToトラベルの全国一斉一時停止を決めた翌日の15日、「GoToトラベル」延長に1兆311億円を計上した。その他「GoToイート」に515億円、観光施設の改修や魅力の向上に549億7200万円で総計2兆円超という大盤振る舞いだ。全国旅行業協会会長に君臨する二階俊博幹事長の実力を思い知らされるが、なんのことはない全部税金で一般国民が払う金だ。二階幹事長はおそらくこの世にいないであろう将来のツケだ。
「そのへんは私も言いづらいんでパスしますけど、GoTo(トラベル)の延長だって春節を見込んでの話でもありますからね、あまり報じてないですね、これ」
そう、小さな記事だったが、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会が11月27日、青年部が首相官邸で菅総理と面会して多田計介会長の要望書を手渡している。この要望書の中には延長が当初2021年1月末だったのを延長して欲しいこと、その理由が春節に中国からのインバウンドの需要が見込めないことが盛り込まれていた。GoToトラベル延長はオリンピックだけでなく、この期に及んで業界団体とそのバックの二階幹事長による春節目当てだったのだ。経団連の古賀審議員会議長も「日本企業にとって中国でのビジネスが占める割合は大きく、通信手段が発達したとはいえ往来が出来ないことは課題だった。その課題が解消されることは、正常化に向けた大きな一歩」と歓迎の声明を出している。
「中国人は数が多いですからね、金払いもいい。その味を覚えちゃいましたから……コロナばらまいたあちらさんの平気な顔はしゃくですけど、こっちも商売と割り切ってます」