スポーツ

門田博光氏への野村克也さんの言葉「チャンスは1回だけや」

「南海の三悪人」のひとり門田博光氏

「南海の三悪人」のひとり門田博光氏(時事通信フォト)

 2020年2月に亡くなった野村克也さんは、プロ野球人としての功績だけでなく、鋭い観察眼と深い洞察力に裏打ちされた多くの名言を遺している。プレイング・マネージャーとして南海ホークスで采配を振るっていた1970年代、個性が強すぎるあまり監督として手を焼いたという江本孟紀氏、江夏豊氏と並び「南海の三悪人」と呼ばれた門田博光氏が、野村さんにかけられた忘れられない一言について振り返る。

 * * *
 当時は今の選手のようにチャンスを何度も与えられることはなかったですね。二軍降格は二度と一軍に戻れない片道切符という覚悟だった。プロ1年目の時、野村監督から「スイングが速いから、1回だけチャンスやるわ」と言われたんです。「1回だけですか?」と聞き返したら、「1回だけや」と。それで開幕から2番ライトのスタメンで使ってもらい、その期待に応えて3割くらい打てていたんですが、帰塁した時に肩を脱臼して離脱した。1か月半ほど野球ができませんでした。

 2年目は「そこそこ頑張っていたから、もう1回だけチャンスをやるわ。これでアカンかったら、悪いけど社会人野球に戻ってくれるか」と言われて、必死に頑張って打点王を獲得し、3年目からレギュラーで使ってもらえるようになった。「チャンスは1回」という言葉は、それからもずっと頭に残っていました。

 少ない言葉で奮い立たせるのが本当に上手かったですね。

 ノムさんと僕は似たような性格で、ひたすら野球に没頭し甘えることができない。晩年になって「とことん打撃を追究する門田ほどの野球バカは二度と出てこないだろう」と野村流で認めてくれましたが、ノムさんこそ野球に対してはバカがつくほど真面目な人でしたね。

【プロフィール】
門田博光(かどた・ひろみつ)/1948年生まれ。プロ入りした南海ホークスで野村克也氏はプレイング・マネージャーだった。通算567本塁打、同1678打点はいずれも王貞治氏、野村克也氏に次ぐ歴代3位。

※週刊ポスト2021年1月1・8日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
浅香さんの自宅から姿を消した内縁の夫・世志凡太氏
《長女が追悼コメント》「父と過ごした日々を誇りに…」老衰で死去の世志凡太さん(享年91)、同居するスリランカ人が自宅で発見
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト