コロナ禍での小説連載の苦労を語った志賀晃さん
鴻上:じゃあ、女性誌の記者がリアルにやっている取材の様子を小説に取り入れたわけですか?
志駕:そうです。いろいろ編集部に“逆取材”をして“そうか。こう張り込むのか”“タレ込みってホントにあるのか”とわかって……(笑い)。だけど張り切って連載を始めてすぐに、コロナが起こってしまった。日々起こるリアルタイムの世相を反映させて進む小説だったので、毎週締め切りギリギリまでコロナの最新情報も入れて書き続けました。
鴻上:よくコロナ禍のなかで最後まで書き上げましたね。
志駕:特に緊急事態宣言が出るか出ないかの4月頭は、世の中がどうなるか皆目見通せなくて本当にきつかったです。小説のあらすじもずいぶん変えました。本当は夏のオリンピックでエンディングを迎えるはずが、五輪そのものがなくなってしまったという……。
〈小説で描かれたのは平成30年6月から令和2年9月までの日本。嵐の活動休止宣言やカルロス・ゴーンの日本脱出、新元号の発表などさまざまなニュースがあったが、記憶に残るのは日々感染者数や緊急事態宣言など新型コロナ関係の出来事だ〉
鴻上:ぼくもこんな一年になるとは思いませんでした。2019年の秋に、TBSの情報番組『グッとラック!』が始まるときにコメンテーターを依頼されて、三角関係や不倫の話をのんきにすればいいやと引き受けたらコロナがきた。
ぼくは作家だから嘘はつけないし、ごまかしのコメントもしたくなかったから、番組で「もっとPCR検査を増やすべき」「希望者が予約なしで受けられるようにすべき」と自分が思ったことをそのまま発言したら、反対派から「医療崩壊が起きる」「何を考えているんだ」などと激しく攻撃され、放送されるごとにぼくのスマホは毎回炎上していました。
志駕:鴻上さんに限らずコロナが起きてから、SNSでも有名人のコメントが一部を切り取られ、炎上するシーンが目立っているように思えます。「炎上しやすい発言」の傾向ってあるんですか?
鴻上:やっぱり、政府に逆らう意見の方が炎上の炎がでかい印象ですね。大きなものに乗っかっている限りは攻撃されないという、安心感がすごくあるんだと思う。
志駕:特に政府の後ろ盾もなく、不要不急だとやり玉に挙げられたエンタメ業界はしんどいものがありましたよね。
鴻上:そうですね。2020年2月26日に公演の自粛要請が出ましたが、そのときぼくが「自粛要請と休業補償はセットだ」とツイートすると、「結局、金が欲しいのか」「好きなことをやっているのに文句を言うな」と散々叩かれました。
欧米は政府がロックダウンしたら補償するのが当たり前だけど、日本は中途半端な自粛要請が出て、みんなが忖度した。挙げ句の果てが自粛警察による同調圧力の強要。これって日本人特有で、店を開けている飲食店への張り紙なんて、アジア・太平洋戦争中の隣組の「お宅の家からすき焼きのにおいがする。このご時勢なのにぜいたくはどうか」と密告し合っていたのと一緒です。