スポーツ

ノムさんが山﨑武司を復活させた「格好つけんで全力でやれ」

キャリア最後の楽天で、キャリアハイを記録した山﨑氏(時事)

キャリア最後の楽天で、キャリアハイを記録した山﨑氏(時事)

 2020年2月に亡くなった野村克也氏が最後にユニフォームを着たのが楽天監督を務めた2006~2009年。『週刊ポスト』(2020年12月21日発売号)では、監督を務めた南海、ヤクルト、阪神、楽天の8人の教え子が「ノムさんの言葉」を語っているが、そこで収録できなかった未公開証言をNEWSポストセブンの読者にお届けする。

 本稿では、最後の教え子となった楽天の山﨑武司氏、ヘッドコーチを務めた橋上秀樹氏の証言を紹介する。チーム発足からまだ日が浅く、低迷するシーズンが続いていた楽天で、監督を務めた4年間で6位→4位→5位→2位と最後に結果を出した野村氏。その教えは今も両氏の胸に残っている。

 * * *
 山﨑氏は16年間在籍した中日で主砲として活躍し、その後、オリックスで2年間過ごしたが戦力外通告を受け、2005年にチームが発足した楽天に加わった。野村氏の監督2年目にあたる2007年にはキャリアハイの43本塁打、108打点で二冠王に輝いた。「野村再生工場の長男」を自任する山﨑氏は、最初は野村監督就任を快く思わなかったのだという。

「野村監督はヤクルトや阪神の監督時代に中日で見ていましたが、一緒にやりたくないと思ってましたね。楽天には、田尾安志監督に誘われて思い出作りの気持ちで入団したのですが、2年目に野村監督が来てズッコケました。最悪だと思いましたね(笑い)。最初はお互いに牽制し合っていましたが、そのうち会話するようになって噛み合ったんですよ。

 野村監督に色紙を書いたもらったのですが、『うまくやるより全力でやれ』という言葉が好きでした。監督は人を見ていろいろ言葉を変える人でしたが、普段から『格好をつけんでいいから全力でやれ』と言われていたので、それを書いてもらったのです。単純な言葉ですが、アストリートの心に響きますね。野球選手に限らず、アスリートというのは格好つけたがるものなんですよ。もちろん僕もお客さんにいいところを見せたい、いいプレーを見せたいと思うけど、その根底にあるべきは『全力でやること』だと教わりました。

 野村野球はデータ野球だとかID野球だとか言われて、難しいものと思っている人も多いですが、実はわかりやすい野球なんです。野村監督はよく『ダメならしょうがない』と口にしていて、潔さがある。例えば、1打席目にいろんな材料を持って打席に立ったのに打てなければ、『もっと勉強して2打席目に頑張れ』と言う。それでもダメだと、『3打席目はもっと頑張れ』。でも、3打席目も打てない時は『しゃあないわ。諦めろ』という潔さがありましたね。

 キャッチャーの嶋基宏はよく怒られていましたが、僕には意外と優しかったですよ。楽天ではコーチの多くはヤクルト時代の教え子で、みんな監督の前では直立不動でブルブルなんです。でも僕は当時は敵として戦い、同じチームになってからは急にフレンドリーに接してくれましたから、コーチ陣は面白くなかったかもしれませんね(笑い)」

関連記事

トピックス

新恋人のA氏と腕を組み歩く姿
《そういう男性が集まりやすいのか…》安達祐実と新恋人・NHK敏腕Pの手つなぎアツアツデートに見えた「Tシャツがつなぐ元夫との奇妙な縁」
週刊ポスト
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
あとは「ワールドシリーズMVP」(写真/EPA=時事)
大谷翔平、残された唯一の勲章「WシリーズMVP」に立ちはだかるブルージェイズの主砲ゲレーロJr. シュナイダー監督の「申告敬遠」も“意外な難敵”に
週刊ポスト
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン
35万人以上のフォロワーを誇る人気インフルエンサーだった(本人インスタグラムより)
《クリスマスにマリファナキットを配布》フォロワー35万ビキニ美女インフルエンサー(23)は麻薬密売の「首謀者」だった、逃亡の末に友人宅で逮捕
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左/バトル・ニュース提供、右/時事通信フォト)
《激しい損傷》「50メートルくらい遺体を引きずって……」岩手県北上市・温泉旅館の従業員がクマ被害で死亡、猟友会が語る“緊迫の現場”
NEWSポストセブン
財務官僚出身の積極財政派として知られる片山さつき氏(時事通信フォト)
《増税派のラスボスを外し…》積極財政を掲げる高市早苗首相が財務省へ放った「三本の矢」 財務大臣として送り込まれた片山さつき氏は“刺客”
週刊ポスト
WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新まで取り込む財務省の巧妙な「高市潰し」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新まで取り込む財務省の巧妙な「高市潰し」ほか
NEWSポストセブン