MAMAは、どのアーティストがどの賞を受賞するかよりも、どれだけすごいパフォーマンスを見せたか、どんな仕掛けでファンを楽しませたか、という事の方が話題になる印象がある。今年は特にオンラインでの配信だったこともあり、韓国で「実感コンテンツ」と呼ばれるAR・VRなどの仮想現実や拡張現実を駆使した仕掛けが多かった。舞台上だけでなく客席まで使い、先端技術で実際の映像とグラフィック映像を合成し、現場で見るよりもさらに色鮮やかで華やかな演出を行った。
BTSは「ボリュメトリックキャプチャ」というXR技術(ARやVRの総称)を使い、肩の手術のため活動を休止しているSUGAを登場させた。実際に舞台上にいるのは6人のみだが、新曲『Life Goes On』が始まりSUGAのパートになると、他のメンバーと同様画面に溶け込むようにSUGAが登場し、メンバー7人全員が揃うという仕掛けを施した。あらかじめ専用スタジオでSUGAを4K画質のカメラで360度撮影し、高画質の3次元デジタルデータで再現したという。まるで本当にSUGAが同じ空間にいるような精巧な仮想現実だった。米ビルボードでチャート1位を獲得した『Dynamite』でも曲の後半、AR技術でメンバーの後ろで花火が打ち上げられ、フィナーレでは花火がDYNAMITEの文字に変わる、という演出が施されていた。
MAMAの目玉はBTSだけではない。デビュー20周年を迎えたBoAの特別ステージも素晴らしかった。BTSより先に韓国初の賞を数多く獲得した先駆者であるBoAは、韓国人なら誰もが口ずさめるのではないかというほどヒットした曲『No.1』と、韓国ボーイズグループ「SHINee」のテミンと難易度の高いダンスを披露した『Only One』、新曲『Better』の3曲を披露。全てかっこよく、デビューから今までを短く編集した映像で『Better』が流れ始めた時は、「20年間あっという間だったな~」という感慨深い気持ちになった。
BoAといえば、2002年3月にリリースした日本でのファーストアルバム『LISTEN TO MY HEART』で、韓国人で初めてオリコン週間アルバムランキング1位を獲得し、セカンドアルバム『VALENTI』も発売初日に100万枚を超える大ヒットを記録した日本でも馴染み深いアーティスト。最近は日本での露出は減っているが、今は所属事務所であるSMエンターテインメントの取締役を務めながら曲作りも続けている。
コロナの影響で全てのイベントがオンラインでの開催となってから、テレビやスマホ越しにしかアーティストに会えない1年だったが、韓国エンタメ業界はコロナ禍ならではの試みでファンを沸かせている。MAMAは公式YouTubeからも観られる。最新技術を駆使した超豪華K-POPスターたちのパフォーマンスをぜひその目で確認して欲しい。
【趙章恩】
ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。