(写真/GettyImages)

ハイレベルなダンスを披露するBTS(写真/GettyImages)

ARMYは法改正を望んでいない?

 今回の法改正は、BTSファンにとっては嬉しいニュースのはずだが、ARMYの反応は2つに分かれる。「あと2年は、メンバー7人全員が揃う“完全体”のBTSの活躍が見られる」と喜ぶ声が多い一方で、「BTSメンバー本人は兵役義務を果たすと何度も言っているのに、政治家らが注目されたくてBTSを利用している」「国民の支持を得るため、『BTS法』などと言い、さもBTSのために法改定したようなアピールをしないで欲しい」と反発する声も少なくない。

 また、法改正とは裏腹に、「BTSは兵役の義務を果たすべき」、「ARMYはBTSの兵役免除も延期も望んだことはない」といったARMYの声も少なくない。数年前なら、芸能人は飲酒運転をしても違法薬物を使用しても、ファンが多ければすぐに芸能界に復帰できる雰囲気があった。しかし最近は違う。ファンクラブが所属事務所に対し、犯罪を犯した芸能人の解雇を求める声明を発表したり、物議を醸したアーティストが制作に参加した曲をアルバムに入れないよう、グッズ購入をボイコットしたりする。「好きだから何でも許す」、「芸能人は特別扱いされて当たり前」ではなく、社会通念上不適切なことには声を出す風潮が高まっているのだ。

 その象徴的な存在と言えるのがARMYだろう。ARMYは、韓国ファンダム(熱心なファン集団)の価値観を変える存在として、無条件に好きな芸能人を支持し愛情を注ぐのではなく、同じ社会の一員として一緒にエンターテインメント産業を育てるパートナーのような関係になりつつあるのだ。今回の法改正も、「BTSの活躍が見たいから兵役を免除して欲しい」ではなく、「ちゃんと義務を果たして末永く一緒に盛り上がろう」という雰囲気がある。

 2020年11月20日、ソウルで行われた新アルバム発売の記者懇談会で、JINは「何度もお話した通り、国に呼ばれたらいつでも応じます」、「メンバーともよく話しますが、兵役は全員が応じる予定です」と話している。メンバーとARMYが同じような考え方で活動しているからこそ、強固なファンダムが生まれていくのだろう。

【趙章恩】
ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。

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