「夫が息を引き取ったらすぐ互助会に連絡して、死亡届などの面倒な手続きや通夜、葬儀の準備などをすべて代行してもらいました。積み立てていたお金は葬儀代の一部にもなったので、金銭的な負担も軽減されました。日頃からこうした準備をしていない人が、夫にパッと死なれたときに困る。多くの人は知識がないから困るんです」

 残された妻が最も必要とするものの1つが“自由に使えるお金”だ。夫が家計を管理している場合は、夫が死ぬと銀行口座を凍結され、生活費の捻出に苦労することもある。

「わが家は家計をすべて私が管理していました。普段は夫の厚生年金で暮らし、私の国民年金はすべて自分名義の銀行口座に積んでいたのです。自分のお金を確保しておけば、いざというとき困りませんから」

 精神的な喪失感についても、10年に及ぶ介護をしながら心の準備を重ねていたため、問題なかったという。長い介護生活は、苦痛ばかりを生み出すだけではないという好例だ。

「要介護3でしたが、認知症はなく、手助けすればお風呂にも入れたので、入院しているとき以外は在宅介護をしていました。おかげで、いざというときの心構えを準備することができた。そのときの楽しい思い出がいっぱいあるから、夫がいなくなっても寂しくはないんです」

 時々、ふと「恋しい」と感じることはあるという。それは「寂しい」とも「懐かしい」とも違い、「お互い仲よく暮らせてよかったな」という気持ちだと話す。

「孫が女の子ばかりなので、お墓は作らないと夫婦で決めていました。夫の遺骨は粉骨にしてあります。私の遺骨も、夫と一緒に散骨してもらうつもりです」

 コンピューターおばあちゃんは、自身が骨になった日のことまで計算済みだ。

※女性セブン2021年1月21日号

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