情報が漏洩しただけでも重大な問題だが、今回の福岡県の場合は、人権を毀損するようなセンシティブな情報まで掲載されていたという。
「今のところ、流出した情報が氏名や住所、と報じられるに留まっています。そのため愛知の二の舞かとも言われていましたが、福岡県が流出させた情報には、感染者の氏名や住所だけでなく、職業や携帯電話番号、搬送先の病院名、症状まで、かなり詳細な個人情報が含まれていたのです」(全国紙記者)
流出情報には、勤務先でクラスター(集団感染)が発生し感染したという情報が患者名と紐付けられていたり、関連情報として福岡市の歓楽街・中洲のキャバクラ店の名前も記載されていた。さらに、持病を持つ感染者の備考欄には、病名に加えて「暴力を振るう傾向にある」などと患者を診察した病院側から提供されたであろう情報まで、克明に記されていたのである。
「回復した方から死亡した方の情報まで出ていましたが、ショッキングだったのは、基礎疾患を持つ高齢感染者の備考欄に、万一の際、家族が延命治療を望んでいるかいないか、といったことまで書いてあったことです」(全国紙記者)
流出した情報に自身の名前が掲載されていたという、福岡県内在住の男性(50代)は憤る。
「ニュースを見るまで、自分の情報が漏れていることも、そのような形で自分の情報が管理されていることも知りませんでした。私は昨年の春頃に感染し入院しましたが、特に症状もなく、2週間で退院できました。しかし、家族以外にその事実は知らせていない。今は普通に仕事もしていますが、私が元感染者だと知れ渡った時、周囲はなんと思うか。隠していたのかと陰口を叩かれたり、差別にあう可能性だってある。県は謝罪と個別の説明を行うと言っているが、まだ連絡はない。どう責任を取るのか」(福岡県内在住の男性)
今回流出した情報が、県の担当者が個人的に管理していたものなのか、それとも複数の担当者で管理していたものなのか、現時点では定かではない。誰もが閲覧可能な「全体に公開」の状態ではあったが、検索エンジンで検索すればヒットする、という性質のものではなかった。ファイルがある場所のリンクを知らなければたどり着けないので、取り扱いに細心の注意を払わねばならぬデータだという緊張感が緩んだのだろう。だが「全体に公開」状態がどういうことなのか、少し考えればありえない設定だと気づくはずだ。
せめて、ファイルにパスワードをかける程度の注意を払うことはできなかったのか。国民の極めてセンシティブな情報を軽々しく扱っていたことは、国民を単なる「データ」や「数」としか思っていないのではないか、そう思われても仕方がない。