「マヂラブ寄席」出演者モダンタイムスが明かす秘話
ガヤがその場のノリで始まったものとなると、スタッフたちも臨機応変な対応が求められる。ネタにヤジが飛んだとき、現場はどんな空気だったのか? 出演者であるお笑いコンビ・モダンタイムスは、「現場がピリついた感じがした」と振り返る。
「野田クリスタルがガヤというかヤジを飛ばして、みんなもやり始めたら、カメラマンさん、舞台スタッフさんがざわざわして現場がピリついた感じがしました。『純粋にネタを観たい視聴者が怒るのでは……』という心配が頭をよぎりましたが、芸人のヤジがヒートアップするにつれてカメラマンさん、舞台スタッフさんも大笑いして、良い流れに番組がなっていったと思います」(モダンタイムス・川崎誠)
「実は最初のマヂカルラブリーの漫才のときから、永野さんがもうガヤをしていまして、野田がボケたときに『チャンピオン!』とか言って、みんなで笑っていました。マヂカルラブリーが漫才を終えて戻ってきて、次にランジャタイの漫才を観てたら、野田が結構な声量でガヤを入れて、皆が『ああ、あれくらいやっていいんだ』と思って、そこからはもう芸人のノリになったんだと思います」(モダンタイムス・としみつ)
ネット上を中心に絶賛されている今回の“ガヤ形式”だが、いわゆる「地下ライブ」(世間的に知られていない芸人による小規模なライブ)においては、客席のガヤは馴染みのものだそう。
「我々は地下ライブが活動拠点なので、ヤジには慣れていました。特に我々のファンは、ネタ中に『なんだよ! このネタかよー!』とか『どういうことだよー』などツッコミを入れたり話しかけてくるコアなファンも多いです。野田クリスタルもそんな環境で一緒にやってきたというのが、今回の『マヂカルラブリーno寄席』に繋がっているのかもしれません」(川崎誠)
「ガヤが飛んでくる環境でのネタ披露は、地下ライブでは日常茶飯事ですので、『ああ、今日はそういうライブか』という感じでした。野田クリスタルのインディーズ出身の良いところが、お正月の空気にマッチしたのではないでしょうか」(としみつ)
野田は高校時代、世間的な知名度は無くとも尖ったネタを作り続ける地下芸人の世界に魅了され、自身も数多くの地下ライブに立ってきた。そんな彼にとっては、今回のイベントは斬新どころか、むしろ慣れ親しんだ「実家の味」を振る舞ったようなものだろう。実際、出演した芸人たちも先述のモダンタイムスとザ・ギースのほか、ランジャタイ、脳みそ夫、永野と地下ライブに馴染みのある芸人たちばかり。M-1王者の地下への愛が詰まったイベント、それが「マヂカルラブリーno寄席」だったのだ。
◆取材・文/原田イチボ(HEW)