実は、ベトナム人にとっての正月本番は旧暦の正月(2021年は2月12日が旧暦の元日)。1月1日も祝わない、ということではないのだが、あくまでも本番は「旧正月」。だからこそ「日本の正月」は遊んだりせず、徹底的に「稼ぐ」ことにこだわるともいう。
「本当は旧正月に、ベトナムに帰りたい。でも帰れるかどうかわからない。万が一帰れるようになった時のためにお金も貯めておきたい。そうでなくても、旧正月を友達と一緒に祝えるようにしておきたい。でも悪いことは絶対にしません」(グェンさん)
まさに「生き抜くため」に、過酷な正月を過ごしていた在日ベトナム人達。転売はその金額が大きくなると申告と納税が必要で、ネットを利用した個人の転売に限ると、2019年は転売の無申告による追徴課税が65億円も発生するほどの規模になっている分野でもある(国税庁調べ)。犯罪にならないようにと選んだ転売だが、グェンさんをはじめとしたベトナム人たちの「食い扶持」も、規模によっては「グレー」、もしくは「ブラック」とみなされる恐れは十分にある。
だが、転売を辞めてしまえば、即食べ物も住処も無くなってしまう。普通の仕事はなく、困った先にあるのは、やはり「違法ビジネス」ということになる。夢に胸を膨らませてきた日本に、彼らが救済される手段はほぼゼロ、セーフティネットが存在していない状況なのだ。
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中でも、ベトナム人というだけで蔑みの目を向けられようと、彼らはがむしゃらに働き続けるしかない。