そうした事実を子細に見れば、そもそも日本政府が被告にされることもおかしいし、主権免除の例外になるような特段の事情がなかったことも明白だ。第二次世界大戦当時、各国の軍隊にはほとんど例外なく慰安婦が同行していた。アメリカ軍を中心としたGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)は、日本占領後にGHQ専用の慰安所を作らせたほどである。そうでないと兵士らによる現地女性への性的虐待が頻発するというのが当時の悲しい現実であり、ベトナム戦争に参戦した韓国軍が現地女性を次々とレイプした事件も有名だ。
麗澤大学客員教授の西岡力氏は、この機会に日本政府は自らの立場を国際社会に訴えるべきだと語る。
「そもそも慰安婦問題が、日本による計画的、組織的、広範に強行された反人道的犯罪だという認定が間違っているのだから、それを国際社会に強くアピールすればいいのです。外務省はホームページの『慰安婦』という項目に、強制連行の証拠はなく、性奴隷という表現は間違っている、(韓国や中国が主張する)20万人も慰安婦がいたということも証明されていないなどと日本語と英語、韓国語等で掲載しています。そうした日本政府の姿勢は正しいと思いますが、今後は韓国や国際社会に対する広報をより強める必要があります」
日本はこれまで、韓国の求めに応じて首相や官房長官などが何度も謝罪してきたし、1965年の日韓請求権協定や、2015年の日韓慰安婦合意に基づいて金銭的補償にも応じてきた。しかし、韓国は国際社会に対し、「日本は謝らない。賠償に応じない」と言い続けてきた。残念ながら、強制連行や性奴隷という虚構と同様、それが世界の多くの人の認識になっている。今回の判決を機に、今度こそ日本は正しい歴史を世界に示す必要がある。
『週刊ポスト』(1月15日発売号)では、西岡氏はじめ専門家の意見を交えて、この問題の展望を詳しく報じている。