国内

政治運動に生きる意味を見出した40代ホステスの理想と現実

日章旗や旭日旗を振りながら大久保通りを行進するデモ参加者。韓国系の商店や料理店が集まる新宿・新大久保で在日外国人排外などを叫ぶデモが行われた。写真は2013年3月(時事通信フォト)

日章旗や旭日旗を振りながら大久保通りを行進するデモ参加者。韓国系の商店や料理店が集まる新宿・新大久保で在日外国人排外などを叫ぶデモが行われた。写真は2013年3月(時事通信フォト)

 この世界には、隠された真実があると主張する人たちがいる。では、その「真実」は不変のものかというとそうでもなく、同じ人が、会う度に異なる内容の真実を訴えてくることも珍しくない。独自の理想を追い求め、いくつもの「真実」を渡り歩く女性の主張から考える、個人的な「真実」と社会的に認められる「真実」の乖離について、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
「世の中の矛盾が受け入れられないのかもしれない」

 灰塚麻里奈さん(仮名・40代)がそう言ったとき、新大久保で彼女と初めて知り合った8年前のことが思い出された。

 8年前といえば、少女時代や東方神起が紅白歌合戦に出場するなどした第2次韓流ブーム到来の直後で、韓流スターグッズや韓国コスメが新大久保の店頭にズラリと並び、コリアンタウン化がいっそうすすんだ時期だ。女性でその街を訪れるなら、当然、そういったものへ目が向くと思われるところを、灰塚さんは流行アイテムには目もくれず、目の前を通るデモ隊に、潤んだ視線を投げかけていた。

「本当に、日本政府はおかしいですよね。こうした運動は必要だと思います。今まで誰も言えなかったタブーに切り込んでいるというか、正義を貫いている」

 数百人(筆者調べ)のデモ隊は「韓国人を殺せ」「韓国人は出ていけ」と叫びながら新大久保を闊歩していた。聞くに耐えないような「ヘイトスピーチ」を垂れ流しながら、しかし参加者は皆、悦に浸った様な表情を浮かべているのが特徴的だったが、灰塚さんには、これがあのときは「正義」に見えたと今も話す。

正義の人たちだと思っていたのに、嘘をついていたのが許せなかった

 灰塚さんと出会った当時、筆者は保守系雑誌に寄稿するため、デモを扇動していたグループの一つ、外国人排斥活動を行う「在特会(在日特権を許さない市民の会)」幹部(当時)にも話を聞くなどして取材を進めていた。賛同するデモを応援するためにやってきたという灰塚さんに声をかけたところ、自分が支持する主張の内容について筆者に語ってくれたのだった。それは、第二次世界大戦後の朝鮮半島は日本のおかげで発展できたのに、現在の日本の発展を阻んでいるのは韓国、北朝鮮であり、その事実を日本のマスコミは隠し、偽りの韓国ブームを作り、金儲けをしようとしている……などといったものだった。さらには「日本のマスコミは朝鮮に乗っ取られた」とまで言う灰塚さんの主張は、のちに顕在化する「ネット右翼」と呼ばれる人々の思考を先取りしていたようにも感じられる。

「ネットでいろんなことを『勉強』していくうちに、私たちは何も知らされていないんだと思いました」

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン