ワインディングロードの操縦性に難あり
では、特質をもう少し詳しく述べていこう。純然たるオフローダーというキャラクターのジムニーシエラ。普通のクルマと異なることは、走り始めた瞬間に誰でも体感できることだろう。
2WD(後輪駆動)、4WD、4WDローギアと駆動を切り替えるセレクターレバー
エンジンをかけ、ATのセレクタレバーをDレンジに入れるところまでは普通なのだが、発進すると豪快なギアのうなり音がギュイイイと室内に飛び込んでくる。変速段数とは関係なくスピードに同調した音。年配者にとっては「昔のクルマってこういう音がしていたよなー」と懐かしく思えることだろう。とにもかくにもスタート時点からメカメカしいフィール満点である。
市街地走行での乗り心地はクロスオーバーSUVに比べると快適さで劣る。ジムニーシエラは軽自動車版と同様、過酷なオフロード走行をこなすためにごく柔らかいサスペンションセッティングを持っているが、それは乗り心地には貢献しない。路盤の継ぎ目、舗装の補修跡やひび割れ部分を通過すると、素直にガタガタと衝撃を体に伝えてくる。路面のうねり部分を通過した時の“揺すられ感”も大きめである。
そんなジムニーシエラがオンロードで最も好パフォーマンスを示すのは、意外なことにハイウェイクルーズだった。4速ATは実速度100km/hで3000rpmほど回ってしまうくらいローギアードなのだが、ストロークの長いサスペンションが路面の不整をゆるゆるといなすようになり、乗り心地は上等ではないがフラットだ。
ボディの造形から空力については絶望的な印象があるが、実際には直進性も良好だった。ステアリングの中立は甘く、応答性も鈍いが、それがまるでジープ「ラングラー」のような大型SUVに似た重厚なフィールを演出することに役立っているという感があった。
奥久慈のワインディングロードを行く。オンロードでのハンドリングには難あり
そのステアリング、および前後リジッド式(※左右の車輪が1本の車軸でつながっているシンプルな形式)のサスペンションというシャシーが最もネガティブに作用するのは、舗装された山岳路のワインディングロード。一般のクロスオーバーSUVと比較すると、ハンドリングと呼ぶに値するような操縦性はジムニーシエラには存在しない。
アンダーステア(※注/コーナーを曲がっている最中、速度が上昇するに従ってクルマが外側のほうへ膨らんでしまう現象)の度合いをドライバーに伝えるステアリングインフォメーションは皆無に等しい。
また、路面が綺麗で曲率が定常円に近いコーナリングでは問題ないのだが、老朽化した路面でコーナリング中にうねりを拾うと車体が大きく揺れて接地性が失われる傾向が顕著だった。2WDで走るときはFRだなどと思ってはいけない。ルート状況を熟知したところは別にして、山道はゆっくり、のんびり走るべきだ。