オフロード性能は本当に優れているか
最後はジムニーシエラにとって最大の存在理由であるオフロード。茨城県北部、奥久慈の廃道および林道、そして渡良瀬遊水地のフラットダートを走ってみた。
昭和時代は全国各地に国道含めてオフロードが至るところにあったのだが、今日では舗装率が格段に上がり、深雪地帯以外の普通の道路でジムニーでなければならないというルートはほとんど残されていない。が、舗装されていない廃道や林道では話は別だ。
廃道は枝払いがまったく行われていないことから、大型オフローダーで走るとたちまち傷だらけになってしまったりする。林道はそもそもジムニーの車幅でないと通れないルートも多い。そして、大雨のたびに路面が濁流で削られ、至るところに深い水路が形成されていたりする。
ジムニーシエラの標準タイヤは195/80R15サイズのブリヂストン「デューラー H/T(ハイウェイテレーン) 684II」というオンロード向けのタイヤ。でA/T(オールテレーン)やM/T(マッドテレーン)といったオフロードタイヤのような無理はきかない。尖った石などでパンクさせたりしないよう、慎重に進んだ。
その結果だが、オフロード性能は想像以上にすごかった。前後リジッドサスペンション(車軸懸架式)のため、サスペンションやデフ(差動装置)ケースに接触するような場所でなければ床面をヒットすることはまずない。
また、ジムニーシエラは軽版のジムニーと同様、前後のオーバーハング(※注/クルマを真横から見たときに、前後の車軸から外側にあるボディの部分)がきわめて短く、バンパー下もオフロード用に切られているため、相当に深い水路もクリアできる。林道では極度にえぐれた水路に木材が投げ込まれている箇所がいくつかあったが、それを踏めば通過できた。
林道では推定で平均15%前後の下り急傾斜で自動的に低速を保ってくれるディセンドブレーキも試してみたが、その制御はとても優秀だった。泥濘路と砂利が交互に出てくるような状況だったが、ESP(電子式車両安定装置)の作動ランプがチキチキチキとものすごい勢いで点滅しながら、クルマが変に振られたりすることなく、ステアリング操作だけで実に安定的に降下できた。
渡良瀬遊水地はフラットダート。フラットと言っても普通の乗用車であったらバンパー前端を擦ることはさけられないくらいのうねりだらけの道なのだが、ジムニーシエラにとってはそこは2WDで走るシーンで、難なく通過することができた。
ちなみにクロスカントリー4×4はそういう道を速いスピードで何の気兼ねもなく走ることを目的とはしていない。スピードを出したらクロスオーバーSUV以上に跳ねる。ジムニーシエラもそれは同じことで、他のクルマでは音を上げるような道をゆっくりと踏みしめ、確実に走破するために存在する乗り物。ユーザーのわがままを何でも聞いてくれるのではなく、使う側が道具に敬意を払い、特性を理解して乗るべきなのだ。
ジムニーシリーズに乗るユーザーにはあまり関係ないことだろうが、動力性能と燃費についても触れておく。GPSを使っての0-100km/h加速タイムは11秒7。軽版よりはかなり俊足と言える。
燃費は車重1.1トン、排気量1.5リットルのATモデルとしては悪く、都内の走行で11~13km/リットル、高速巡航は16km/リットル前後。郊外路は燃費が極端に落ちるオフロード走行を多分に含んだことを割り引く必要があるが、高速巡航と同等レベルと推定できる。