「プロのための道具」という一点豪華主義
このように、多目的とはおよそ言えないジムニーシエラだが、それこそがジムニーシエラの魅力の源泉だ。
先に紹介した鈴木修会長の「このクルマでなければ生活や仕事が成り立たないお客様のために作った」という言葉どおり、過酷な道における走破性と操縦性、そしてフレーム強度など必要な部分にのみ徹底的にこだわり、それ以外の部分は切り捨てるという“プロの道具”感が、このクルマに研ぎ澄まされた凄みを与えている。
クロスカントリー4×4と言えども、できるだけ多くの顧客に支持してもらおうと、八方美人的にデコレーションや機能を装備するのがトレンドとなっている中、異色の存在にすら思えた。
ジムニーシリーズに乗るユーザーのうち、昔からのコアユーザーはそういうことを理解して乗っている人たちが圧倒多数派。それに対して第4世代モデルはそうではない顧客も多く集めているという。コアなファンの目には“にわか”が増えたと映るかもしれないが、筆者はそれも悪いことではないと思う。
クルマという乗り物は本来、人が道具の扱いの上達を目指すようなファクターを内包する乗り物である。現代においてはクルマがユーザーのわがままをどこまでも聞いてくれるべきという考え方が一般的になっているため、そういう機運も半ば失われてしまっている。
プロのための道具という一点豪華主義に徹したジムニーシリーズは、それを使いこなすことの楽しみや、その能力をほとんど使わないとしてもそういう道具をあえて持つというライフスタイルがあるのだということを思い出させてくれる、貴重なモデルと言っていい。