今回は時間がとれないということで、遅めのランチをご相伴させていただく形でお話を伺った。この後は「『とある』いいぞ、見てくか?」と言われたが、筆者も予定があるため失礼させていただいた。ライトノベル、アニメなどのメディアミックス作品『とある魔術の禁書目録』を題材にした『Pとある魔術の禁書目録JUA』という機種で、作品は好きだがパチンコを打たない筆者には力説されてもよくわからない。ただ「温泉モード」「銭湯モード」だけはバッチリ記憶した。西口さん、以前会った時より疲れているのか終始そっけなかったのだが、『とある』の面白さを力説する彼は高校時代、『ダイナソア』というパソコンゲームの裏シナリオに熱弁を奮った西口に戻ってくれたのでホッとした。

「これからもホールでクラスターなんか出してやるもんか、だよ」

 別れ際の西口さん、いや西口のプライドだろう。絶対なんてないが、これまで身を切って、徹底したコロナ対策と国への協力をし続けたのがパチンコ業界だった。嫌う人がいるのはわかるが、パチンコ業界が協力したこともまた、クラスターが無かったこと同様、事実だ。

 1月13日、合わせて11の都府県に緊急事態宣言が発令された。もはや経済は限界、あの第1次緊急事態宣言のときのようにパチンコだけ叩いていればいい時代は終わった。気休めに叩きやすいところを叩いたところで、すべての業種に疫禍は襲いかかった。経済や国民どころか、これから国家そのものが疫禍に衰退し始めている。たとえば大阪府は府の貯金にあたる財政調整基金が2020年2月時点では約1043億円だったのが、約234億円にまで激減した。どの自治体も金が尽きかけている。これからはひたすら自粛と増税という未曾有の時代に突入するかもしれない。日本国内で初めて新型コロナウイルスの陽性反応(武漢帰りの中国人)が出た2020年1月15日から丸1年、コロナ禍でも働かざるを得ないサラリーマンや自営業者と一部の裕福な年金者、補助金の出る業種と出ない業種、生活保護を受けられた者とそうでない者 ―― 誰が原因で誰が悪いか、誰が得で誰が損かの罵り合いの中、罹患者が、死者がいまだに増え続けている。

 悲しいかな、この分断された社会はコロナに翻弄されるまま、今年もパチンコの次の生贄を探すことだろう。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。2017年、全国俳誌協会賞。2018年、新俳句人連盟賞選外佳作、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞。寄稿『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社)、著書『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)など。

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