ワクチン接種は欧米が先行する一方、世界中の普及状況は不透明である。200以上の国と地域が参加する夏季五輪の出場選手に行き渡らせるには、IOC主導の働きかけが必要だとする意見だ。
「とりわけ、競技中の感染リスクが懸念されるコンタクトスポーツについては、IOCに加え、国際競技団体などのリーダーシップが重要になるでしょう。たとえばレスリングや柔道ですが、選手やコーチに“ワクチンを打たない場合は参加を認めない”といった条件を出すことも必要ではないか」(前出・鈴木氏)
「ありがた迷惑」
一方で、医療関係者からは懸念の声があがる。医療ガバナンス研究所理事長で医師の上昌広氏は、選手へのワクチン優先接種は「日本国内でもウイルスが蔓延し、ワクチンが行き渡っていないなかでは反発が強まるのは必至。現実的ではない」とする。
「選手らにPCR検査を週2回程度のペースで実施し、陰性証明を取り続けるなどの方法のほうがまだ現実味がある。
仮に世界中のアスリートから“なんとかワクチンを打ってでもやりたい”という声が巻き起こって、世論を動かせるのであれば話は別ですが、主催者側が“ワクチンを打ってでもやらせたい”という印象では、むしろ開催に反対の意見が多くなるでしょう」(上氏)
※週刊ポスト2021年2月5日号