国内

「宅見勝射殺事件」最後の生き残り・中野太郎元会長の生涯

「山口組若頭射殺事件」の現場(当時、写真/共同通信社)

若頭射殺事件の生き残り・中野会長の人物像に迫る(写真は事件の現場。共同通信社)

 1997年8月28日、神戸オリエンタルホテルのラウンジで五代目山口組ナンバー2の宅見勝若頭が射殺された。民間人1人が犠牲になったことに加え、当時はニュースで凄惨な事件現場が映し出されていたため、今なお多くの人の記憶に残っている事件だ。最後の生き残りであり、真相を知る男・中野太郎元会長は20年以上沈黙を続け、ついに帰らぬ人になった。フリーライターの鈴木智彦氏が、中野会長の生涯に迫った。

 * * *
 1月10日、元中野会会長・中野太郎が亡くなった。84歳だった。2003年に脳梗塞で緊急搬送され、以後、リハビリ生活を続けていたという。後遺症で苦しむ中で行なわれた聞き書きを元に、2018年には自叙伝『悲憤』(講談社)を上梓したが、警察の内部資料と見比べると出生地から異なっているなど事実誤認が多い。記憶は曖昧で明瞭に話せなかったに違いない。

 警察の内部資料によれば、中野会長は静岡県田方郡伊東町(現伊東市)で出生し、長崎県の小・中学校を卒業した。高校進学後すぐに中退し、大阪に出ている。そこで世話になったのが、澄田寿三・澄田組組長(二代目山口組若頭)だった。直後、1959年に殺人事件を起こして懲役8年となり、出所後、澄田組長の紹介で三代目山口組若頭の山本健一・山健組組長を訪れた。1969年6月、山本組長と親子盃を結び、山健組の組員となる。

 後年、山健組一門きっての武闘派と評された中野会長には、この頃すでに「喧嘩太郎」という異名があった。とにかくすぐにキレた。暴力団の喧嘩に怪力や技量は必要ない。相手より先にリミッターを解除し、加減なしの暴力を振るった側が強い。中野会長の暴力性を見込んだ親分の山本組長は、のちに山口組五代目となる渡辺芳則の守り刀になるよう命じ、中野会長は渡辺五代目の組織である健竜会の相談役となった。渡辺五代目にとっては怖く、うるさい先輩が目付役になったため、警察は渡辺五代目がこの人事を嫌がっていたと分析している。

 1978年、中野会長は20人あまりの若い衆を引き連れて健竜会を離脱、中野会を旗揚げした。山本組長の死後、渡辺五代目が山健組二代目になると、山健組舎弟頭に直った。1989年の山口組五代目体制の発足後は、山健一門を離れ直参に昇格、1990年7月に若頭補佐に就任した。

 この頃、武闘派・中野会は絶頂期を迎えていた。首都圏を始め全国に進出すると、地元の処分者や不満分子を吸収して勢力を拡大した。暴力イメージは一人歩きし、幻想さえ生んだ。中野会長の自宅に、逆鱗に触れて斬り殺された若い衆の死体がいくつも埋まっているという荒唐無稽な噂さえ流れた。

 一方、五代目山口組内部では、クーデターが画策され、水面下で五代目降ろしが進んでいた。骨肉の争いである山一抗争(1984~1989年)に終止符を打ち、関係者を説得、渡辺五代目を担ぎ上げたはずの宅見勝若頭が、その首謀者だった。

関連記事

トピックス

「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
悠仁さまの「加冠の儀」に出席された雅子さま(時事通信フォト)
《輝きを放つシルク》雅子さま、私的な夕食会で披露した“全身ゴールド” ファッション専門家「秋を表現された素晴らしい一着」
NEWSポストセブン
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
クイズ企画が人気を集めている『新しいカギ』の特番が放送される(公式HPより)
《1コーナーから2時間特番に》『新しいカギ』「高校生クイズ何問目?」が高校生から高い支持 「純粋にクイズを楽しめる」「負けても納得感」で『高校生クイズ』との違いも 
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
「パー子さんがいきなりドアをドンドンと…」“命からがら逃げてきた”林家ペー&パー子夫妻の隣人が明かす“緊迫の火災現場”「パー子さんはペーさんと救急車で運ばれた」
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン