ライフ

小松左京氏が繰り返し主張 専門知を統合した「総合知」が未来をつくる

小松左京氏の作品の意義について、作家の瀬名秀明氏が語る

小松左京氏の作品の意義について、作家の瀬名秀明氏が語る

 2021年は、『日本沈没』や『復活の日』など、未来を予見したかのような作品をいくつも残した小松左京氏の生誕90年にあたる年。作家の瀬名秀明氏は、小松氏のSF小説や、ノンフィクション作品から大きな影響を受けたという。「危機の時代こそ小松氏の問題意識の重要性が増している」と話す瀬名氏。小松氏の作品の意義について、このように語っている。

 * * *
 小松さんの最後の長編『虚無回廊』は、人間のアイデンティティを持つロボットが、宇宙空間で他の知的生命体とコミュニケーションしながら、宇宙の巨大な謎に挑む物語です。少年期に小松さんが読んで感激したというダンテの『神曲』のように、宇宙時代における人類の愛のかたちを描こうとしました。しかし、物語は最終的に当時の科学技術では解決策が見つからない地点まで進み、未完の大作となりました。

 小松さんは自らの作品について「ほんの一行ずつのメモ」と称したことがあります。彼の小説は、執筆時に科学や文学が到達した最先端を書き残したものです。小松さんにとって、人類の知能の限界に挑戦した『虚無回廊』は、宇宙の謎を解く長い旅の途中で書き残したメモだったのでしょう。

 一時期、小松さんは若手作家に会うと、冗談混じりに「きみが『虚無回廊』の続編を書いてくれ」と言っていましたが、その時々の科学の進展に伴って、後世の作家が続編を書いてもいいのではないか。そう思い、私も『虚無回廊』のオマージュとして『新生』という物語を書いたんです。

 作家は未来をつくるものだ──小松さんの信念はこの一言に尽きます。そのために小松さんはSF作家でありながら、『未来の思想』(1967年)や『ユートピアの終焉 イメージは科学を超えられるか』(1994年)といった数々のノンフィクションを残しました。

 作家は小説を書くだけでなく、「未来のビジョン」を読者や人類に提供するものだというスタンスでした。作家は専門家ではないが、アマチュアの立場で様々な専門家に話を聞き、成果をまとめて大きな視点を提供できる。そうした「総合知」が未来を作るという信念に、私も大きな影響を受けました。

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン