このように、一時期ロキノン系が量産されると、そこにハマる人たちを指す言葉として「ロキノン厨」という言葉も登場したとBさんは続ける。
「ネットスラングで『ロキノン厨』という言葉がよく使われていたのは2000年代後半から2010年代頭でした。学生を中心にロキノン系バンドがブームとなり、8ビートや4ビートを中心とした、フェスでジャンプしながら“ノれる”楽曲が量産されました。大学生の間でもロキノン系をカバーする軽音サークルが増えた時期ですね。
しかし、こうしたバンドの勢いも、2010年代に『Suchmos』(2021年2月3日に活動一時休止を発表)、『Yogee New Waves』などシティーポップ系が流行し、その後は『Official髭男dism』や『King Gnu』などの勢いに飲まれ、失速していった印象です。いまでは『YOASOBI』など、ボーカロイド文化を引き継ぎつつ、古き良きロキノンの影響も感じる音楽が出てきている。
もちろん、手堅い人気を誇るロキノン系バンドもいますし、今でもアニメ主題歌に起用されるバンドも多いため、一概に『ロキノンは廃れた』とは言えません」(Bさん)
冒頭、学生に「死語ですよ」と言われた大学教員のAさんにこの流れを説明すると、次のように語った。
「学生から最新の音楽を教えてもらい、聴き込むようにしているのですが、すぐにトレンドが変わるから驚きです。移り変わりが本当に早いですね。最近は学生から、音楽のサブスクサービスに入って、そこでヒットソングを聴くと良いと教わりました。自粛期間中に挑戦したいと思います」(Aさん)
かつて一世を風靡した「ロキノン系」。ロックバンドの楽曲は、ライブハウスやフェスで演者とファンがともに音楽に“ノる”ことが醍醐味だが、コロナ禍でライブハウスでの公演も難しくなっている。とはいえSNSを上手く活用しながら、精力的な音楽活動を続けているバンドもある。音楽トレンドがめまぐるしいスピードで移り変わるなか、国産ロックバンドの今後に注目したい。