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守備の名手・井端弘和 礎を築いた落合監督の「嫌なノック」

井端弘和が「落合監督の嫌なノック」を振り返る(時事通信フォト)

井端弘和が「落合監督の嫌なノック」を振り返る(時事通信フォト)

 異例の無観客で開催されているプロ野球春季キャンプ。この時期にしか見られない光景が、延々とノックを受け続ける「特守」だ。守備の名手として活躍した元中日・井端弘和が、落合博満・元監督のノックについて振り返った。

 * * *
 近年のプロ野球界において、遊撃の名手といえば、中日や巨人で活躍した井端弘和の名が真っ先に浮かぶだろう。とりわけ中日時代には、二塁を守った荒木雅博との“アライバコンビ”で、計7度に渡ってゴールデングラブ賞を受賞した。

 特守が行われるキャンプ期は、荒木とふたりで黒土にまみれる時間を共有したのではないだろうか。入団は井端が1998年、荒木が1996年だが、亜細亜大から入団した井端に対し、荒木は熊本工業から高卒入団。年齢は荒木が2歳下となる。

「ふたりでノックを受けるというのは、ほとんどなかったですね。むしろ、一緒にノックを受けたのは福留孝介(当時は内野手)。

 あいつが鳴り物入りで入団した1999年、ひとりで特守をやるのはかわいそうで、しんどいだろうからと、同じ遊撃の自分が補助要員で一緒にノックを受けることになった(笑)。福留は特打に呼ばれることもありましたが、僕にはいっさいなく、福留が特打の間も僕はノックを受け続けました」

 井端と福留に対し、とりわけノックを浴びせたのは、監督の星野仙一に請われて1999年に中日の1軍内野守備・走塁コーチに就任した高代延博だった。

「高代さんはリズム感のあるノックで、選手に気持ち良く捕らせるのが上手でした。ポンポンポコンという感じで、ツーバウンド目にグラブに収まるような。イメージした通り打球を打ち、野手に狙い通りの体勢で捕らせるようなノック。守っている選手が、巧くなったような感覚に陥るノックでした」

 そして、2004年からの落合博満政権下では落合自ら、井端のノッカーを務めた。

「落合さんも高代さんと同じようにリズム良くノックを打つんだけど、足を使わないと捕球できないような当たりが多かった。決して、気持ち良くは捕らせてもらえませんでしたね……。

 三塁線なら三塁線、正面なら正面、三遊間なら三遊間と、同じ方向に連続して打つのが落合さんのノックの特徴でした。右に左に振られたら、長い時間のノックは受けられません。ただ、落合さんはここに打てば、3、4球で選手がばててしまうというコツを知っているから、こちらが軽快に動いていると、そういう当たりを打ってくる。まあ、嫌でしたね(笑)」

 特守に費やす時間は長い日で2時間から2時間半。しかし、30分で切り上げる日もあった。

「定位置を確保できていなかった若手の頃と違って、落合さんが監督の頃は特守の時間もすべて自分に一任されていました。自分が肉体を追い込むべきだと思った日は2時間半。長いキャンプですから、気分が乗らなかったり、身体が重たかったりする時もある。そういう日は『30分でやめておきます』と言うようにしていました」

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