国内

多摩の70代食堂店主は「1日6万円の休業協力金」の使途に頭を悩ませていた

1月、飲食店に掲示された臨時休業のお知らせ(イメージ、時事通信フォト)

1月、飲食店に掲示された臨時休業のお知らせ(イメージ、時事通信フォト)

 緊急事態宣言により営業時間を短縮した飲食店への休業協力金は必要なことだろうが、一律で1日あたり6万円という価格設定に注目が集まっている。店舗の規模や立地によっては売上よりも多い店が少なくないのでは、という指摘も相次ぎ協力金バブルを疑うような声も上がっている。俳人で著作家の日野百草氏が食堂経営70代男性の困惑をレポートする。

 * * *
「いきなり6万円なんて雑ですよ、ウチみたいな小さいとこが1日6万円、ありえません」

 東京多摩、私鉄沿線の各駅停車しか停まらない小さな駅で、木村亮助さん(70代、仮名)は食堂を経営している。食堂といってもいまは開店休業状態で、昼は近所の工員、夕方過ぎには馴染みの客が酒とつまみ程度に来る店だ。昔は繁盛していたが、大きな工場の移転と駅前の牛丼チェーンなどに押され、店の経営は半分趣味になっている。

「近所の小料理屋なんか休んでます。見たでしょう、どこもお休みです」

 確かに。駅前から続く道すがら、小料理屋だけでなく、小さな飲食店のほとんどは「休業のお知らせ」の張り紙を思い思いのデザインで貼りつけてシャッターを下ろしていた。

「休んだほうがいいって判断でしょうね。この辺の個人(の飲食店)で一日の利益が6万なんてありえませんから。どの店とは言えませんが、夫婦で温泉巡りに行っちゃいましたよ」

 筆者の注文したしょうが焼き定食を置くと、少し離れた席に腰掛けるマスク姿の木村さん。客は筆者しかいない。以前は飲みに来る馴染みや仕事帰りの独身者を見込んで夜9時までやっていたが、緊急事態宣言後は1時間早めて夜8時に閉めるという。

「うちも休んだっていいんですけど、好きで店をやってますからね。趣味みたいなもので」

 木村さんは夫婦揃って年金受給者。店は古いが自己所有。奥さんの実家が土地持ちだったので駐車場も複数所有している。引退して悠々自適でもいいはずだが、料理を振る舞い、馴染みのお客と触れ合うことが大好きな木村さんはずっと店を続けてきた。そこに襲いかかったのがコロナ禍だ。

「去年の緊急事態宣言でも店は開けました。ほとんど知り合いしか来ませんでしたけど、仕事の人には助かったって感謝されましたね」

関連キーワード

関連記事

トピックス

“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン