保守系メディアとしては、これまでFOXニュースが圧倒的なシェアを持ってきた。しかし、それよりさらに過激な右派メディアもある。例えば、ニュースサイトのNewsmaxやケーブル局のOne America Newsなどだが、それぞれ規模は小さい。そうしたメディアをトランプ氏が買収すれば、初期投資も準備も要らず、すぐに「トランプ・チャンネル」を開設できる。上記2社については、トランプ氏から買収提案があれば検討する用意があると見られている。
自分でもう一度、政界に進出するとしても、宣伝費をかけずにいくらでも利用できる。逆に、右派の支持がほしい共和党議員から宣伝費をとって出演させることもできる。どう使ってもボロ儲けである。そのためにも、共和党のイニシアチブを握っておくことが肝心だ。党内に芽生えている反トランプ集団については、徹底的に叩いて降参させればいい。
トランプ・チャンネルの開設によって、アメリカの分断はさらに広がり、民主主義を否定する動きも活発になるだろう。今のところその動きに対抗しそうなのは、トランプ氏と袂を分かったFOXニュースのオーナーであるメディア王、ルパート・マードック氏くらいだが、彼もまたメディア人というよりビジネスマンである。両者が手を組む可能性もある。
■佐藤則男(ニューヨーク在住ジャーナリスト)