ライフ

世界で特に睡眠時間が短い45~59才の日本人女性 日本特有の背景あり

日本人女性の睡眠時間は世界の中でも最も短い

日本人女性の睡眠時間は世界の中でも最も短い(イラスト/高梨としみつ)

 経済協力開発機構(OECD)『Gender Data Portal 2019』によると、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、主な先進国30か国の中で最下位だという。また、総務省『社会生活基本調査』(2016年)では、特に45~59才の女性の睡眠時間が極めて短いとのデータがあり、その平均睡眠時間は7時間を切っているというのだ。

 さらに、フジ医療器による『第8回睡眠に関する調査』(全国の6457人を対象に実施)では、94.8%が睡眠に不満を感じていると答えている。「最も不満を感じること」という質問には、「寝ても疲れがとれない」「何度か目が覚める」「トイレが近い」「眠りが浅い」など不眠症を連想させる回答が多く挙がっていた。コロナ禍で日本人の睡眠の質は、おおいに劣化しているのだ。

 突然ですがここで問題。不眠と不眠症の違いがわかりますか? 1981年に日本で初めて睡眠外来を開設した、久留米大学医学部神経精神医学部教授の内村直尚さんはこう語る。

「昼間の活動に支障があるかどうかがポイントです。夜の睡眠が不充分というだけでは、不眠という現象に過ぎません。日中の活動中に、がまんできない眠気に襲われるなどの機能障害や生活の質の低下などが加わると、そこで初めて不眠症という病気となり、治療が必要になるのです」

 特に40代半ばから59才の日本人女性の睡眠時間が、世界の中でも最も短いのには、「日本特有の背景がある」と、内村さんは言う。

「夫が家事に非協力で、子供の弁当や家族の食事作り、親の介護の負担などの家事を女性が一手に引き受けています。しかも、子供が受験生の頃に閉経や更年期障害が重なる人も多い上、いまはコロナ不安やテレワークによるストレスが安眠を妨げ、危機的状況にあるのです」(内村さん)

 また、RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック院長の白濱龍太郎さんは、「更年期のせいと思い込んでいた不調が、実は不眠症が原因のことも多い」と語る。

「その最たる例が、女性の睡眠時無呼吸症候群(SAS)でしょう。更年期障害の症状には、めまいや頭が重い、眠さなどがありますが、それらは睡眠障害の症状と重なります。SASは太った中年男性がかかるイメージを持たれていますが、女性も閉経後は3倍くらいに増えていますのでご注意ください」(白濱さん)

【プロフィール】
内村直尚さん/睡眠障害のエキスパート。久留米大学医学部神経精神医学部教授。同大学の学長で、主任教授も務める。著書に『不眠とストレス』(創元社)など。

白濱龍太郎さん/睡眠専門医。RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック院長。2013年に睡眠と呼吸に関して幅広く診療を行う同院を設立。著書に『熟睡法ベスト101』(アスコム)など。

取材・文/北 武司

※女性セブン2021年3月11日号

関連記事

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
リモートワークや打合せに使われることもあるカラオケボックス(写真提供/イメージマート)
《警視庁記者クラブの記者がカラオケボックスで乱痴気騒ぎ》個室内で「行為」に及ぶ人たちの実態 従業員の嘆き「珍しくない話」「注意に行くことになってるけど、仕事とはいえ嫌。逆ギレされることもある」 
NEWSポストセブン
「最長片道切符の旅」を達成した伊藤桃さん
「西国分寺から立川…2駅の移動に7時間半」11000kmを“一筆書き”した鉄旅タレント・伊藤桃が語る「過酷すぎるルート」と「撮り鉄」への本音
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱親方と白鵬氏
旧宮城野部屋力士の一斉改名で角界に波紋 白鵬氏の「鵬」が弟子たちの四股名から消え、「部屋再興がなくなった」「再興できても炎鵬がゼロからのスタートか」の声
NEWSポストセブン
環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(22)
《不敵な笑みでテロ組織のデモに参加》“環境少女グレタ・トゥンベリさん”の過激化が止まらずイギリスで逮捕「イスラエルに拿捕され、ギリシャに強制送還されたことも」
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン