糖質ゼロビールの“率直な味わい”は?
ここまで、コロナ禍での健康志向の高まり、酒税改正で狭義のビールに拡販チャンスが巡ってきたことに加え、認知度の高い「一番搾り」というブランドで展開したことのプラス要因も重なり、「一番搾り糖質ゼロ」の販売は、もともと家庭用に強いキリンだけに、昨秋以降順調に推移している。
「一番搾り糖質ゼロ」の発表会当時、試飲した感想を問われた布施社長は、こう評していた。
「発泡酒や第3のビールの糖質ゼロだと麦のうま味をあまり感じませんが、『一番搾り糖質ゼロ』は機能系ビールを感じさせず、スッキリしていてまさに普通のビールと変わらない味わいです」
とはいえ、糖質ゼロビールを実現するため、アルコール度数は4%と低め。度数の影響ばかりではないだろうが、レギュラーの「一番搾り」に比べると、コクの面では確実に落ちる。
その点は好みの問題で、「物足りない」と感じる向きもあれば、「かえって飲み飽きなくなった」という人、あるいは「機能系でない普通のビールが飲みたい。その分、休肝日があればいいのでは」と考える人もいる。
キリンに真っ向勝負挑むサントリーの自信
そんな「一番搾り糖質ゼロ」のヒットに待ったをかけるべく、4月13日、サントリービールから刺客が登場する。「パーフェクトサントリービール」がそれだ。
4月に「パーフェクトサントリービール」で糖質ゼロビールに参入するサントリー(時事通信フォト)
2月の発表会で登壇した、同社執行役員マーケティング本部長の和田龍夫氏は、新商品のアドバンテージについて、こう語っていた。
「開発は2016年からスタートしましたが、糖質ゼロビールの難易度が高いのは、アルコール度数を上げられないことでした。機能系ビールは、どうしてもコクや刺激が少なめ。われわれはそこを克服し、度数5.5%の糖質ゼロビールを実現しました。糖質ゼロなのにコクがあって飲み応えもある。この製法は特許も取得しています」
コクと糖質ゼロというトレードオフを解消したという意味では、後発者の強みかもしれないが、受けて立つキリン側も、
「サントリーさんがどんな広告展開や店頭訴求をしてくるのか楽しみではあります。他社からも糖質ゼロビールが出てこの市場が盛り上がれば、再度『一番搾り糖質ゼロ』にもスポットが当たるので、こちらとしても再チャンスです」(前出の幹部)
と余裕を見せる。