クラフトビールの強敵となるのは「サッポロ」か
アサヒやサントリーもクラフトビールを手がけてはいるが、それほど積極的には見えず、前出のキリン幹部は、意外にもサッポロの名を挙げて、こうエールを送る。
「クラフト会社に一番近いのは、実はサッポロさんでは。当社の役員も『おそらく、サッポロさんは今後、“クラフト文脈”の路線で来るのではないか』と推測しています。狭義のビールにおけるサッポロさんの技術力はかなり高く、純粋においしいビールを作っていると思いますしね」
確かに、サッポロは狭義のビールの品揃えが多く、定番の「黒ラベル」や「ヱビス」に加え、通称“赤星”と呼ばれる「サッポロラガー」、北海道限定の「サッポロクラシック」なども人気があり、「ビールはサッポロが美味い」というユーザーの声を、ネットでもよく目にする。それだけコアなファンが多いのだろう。
2019年から”伝説のホップ”を使用したクラフト商品を販売しているサッポロ(時事通信フォト)
サッポロもクラフトで、2019年から伝説のホップを使用した「SORACHI 1984」をスーパーでも販売したが、好き嫌いが分かれたのか、商業的にはパッとしなかった。が、飲食店受難の時代、同社もビアホールの銀座ライオンで供している「エーデルピルス」や「白穂乃香」といったビールを、缶のクラフト製品として発売したらファンに受け入れられるのではないだろうか。
キリンが仕掛け人となった糖質ゼロビールとクラフトビールの本格拡販。今年、この2つが本格的に定着するかどうかは、退潮が続いてきたビール業界の将来を占うことにもなりそうだ。