ビジネス

「糖質ゼロ」はビール離れの救世主となるか キリンvsサントリー攻防の行方

ビールカテゴリーで初の糖質ゼロを実現させたキリン「一番搾り糖質ゼロ」(時事通信フォト)

ビールカテゴリーで初の糖質ゼロを実現させたキリン「一番搾り糖質ゼロ」(時事通信フォト)

 健康志向の高まりを受け、「発泡酒」や「第3のビール」で数多く見られるようになった“糖質オフ/糖質ゼロ”の商品。ついには本格ビールでも登場して話題となっているが、ビール離れが続く中、糖質を抑えた商品は今後も新カテゴリーとして定着するのか──。経済ジャーナリストの河野圭祐氏が各社のビール戦略に迫った。

 * * *
 ある日の大手スーパーの酒類売り場。シニア世代の夫婦がビール類の棚を眺めながら、
「糖質ゼロが流行っているんだってねぇ」と言葉を交わしつつも、手を伸ばして買い物カゴに入れた商品は機能性ではない、普通のビール銘柄だった。

 もちろん、健康を気にする人には糖質ゼロビールは刺さったと目され、味が物足りないと思う人もいれば、価格重視で発泡酒や第3のビールをチョイスする人、逆にプレミアムビールの棚に手を伸ばす人など、味覚や選好は人それぞれだ。

 コロナ禍で業務用ビールは大打撃を受けたが、スーパーやコンビニと違って、飲食店向けはいわゆるビールがほとんどで、「発泡酒」や「第3のビール」はほぼないに等しい。ビールメーカーとすれば、飲食店需要が蒸発してしまった分は、主戦場となった家庭用で取り返すしかない。昨秋の酒税改正第1弾でビールが減税、発泡酒が据え置き、第3のビールが増税となったことから、家庭用ビール拡販の追い風要因もある。

発泡酒や第三のビールでは既に激しい市場争いとなっている糖質オフ商品

発泡酒や第三のビールでは既に激しい市場争いとなっている糖質オフ商品

開発に5年を要したキリンの糖質ゼロビール

 コロナ禍によって健康に気を遣う人が増えたが、その点を訴求する「糖質オフ」や「糖質ゼロ」といった商品は過去、発泡酒や第3のビールのジャンルで展開されてきた。主だったところでは、「淡麗グリーンラベル」(糖質70%オフ/キリンビール)や「金麦」(同75%オフ/サントリービール)をはじめ数多く、正直、すべてはとても覚え切れない。

 これまで、狭義のビールカテゴリーでは糖質ゼロ商品はなかったが、そこに風穴を開けたのが、昨年夏に「一番搾り糖質ゼロ」を発表(発売は2020年10月)したキリンだ。

 同社は過去、1999年に「ラガースペシャルライト」、2003年に「ラガーブルーラベル」という、ともに糖質50%オフ(アルコール度数もともに5%)のビールを発売しているが、定着するまでには至らなかった。ビールは麦芽を50%以上使用することで麦のうま味が引き立つが、同時に糖質量も上がってしまう。

 そこで、キリンは「一番搾り糖質ゼロ」の試醸を350回以上も繰り返し、糖質低減に適した麦芽の使用や、発酵技術を進化させて、通常より元気な酵母を使って糖質を食べ切るようにした。こうした技術ハードルの高さから、開発には5年を要している。

関連記事

トピックス

世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
浅香さんの自宅から姿を消した内縁の夫・世志凡太氏
《長女が追悼コメント》「父と過ごした日々を誇りに…」老衰で死去の世志凡太さん(享年91)、同居するスリランカ人が自宅で発見
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト