夫への猜疑心は消えず、フラッシュバックも

 夫婦のカウンセリングは今も続いています。隆弘は、週末はもちろん、極力平日も育児を手伝い、美紀子は1人で過ごす時間ができました。最初は、隆弘と一緒に食事をするのが嫌だ、と美紀子は息子と2人で食べたり、隆弘に息子を任せたりしていましたが、少しずつ3人で食事をする機会が増えてきています。

 週末は、隆弘が息子を連れて夜まで出かけたり、美紀子が1泊でホテルに泊まったりすることもまだ続いていますが、親子3人で出かけることもできるようになりました。息子は、お母さんがいないことに寂しさを訴えることもあるけれど、お父さんと過ごす時間が増えたことは喜んでいます。美紀子の心の状態も少しずつ安定し始めており、息子に対する拒否感は消えつつあります。

「最近は一緒にいる時間が減ったせいか、可愛いな、と思えるようになってきています」

 それでも時々、元に戻ってしまうこともあると言います。

「夫への猜疑心は消えていませんし、フラッシュバックが起こる時もあります」

 そんな時は、息子といるのが辛くなってしまう時もあると言うのです。それもきっと少しずつよくなるはずです。それと並行して美紀子の隆弘への感情も必ずよいものに変わっていくはずです。

 美紀子の頭から、浮気が完全に消えたわけではありません。隆弘も緊張状態を保ち、ハラハラしながら生活している、と言います。でも、美紀子は、

「夫が努力してくれているのはすごくわかります」

 と言っていて、私は、カウンセリングを通して、隆弘が美紀子のことを真剣に思いやるようになり、美紀子もその気持ちを受け入れ、歩み寄っていくことで、この家族はきっとやり直していけると思っています。

【プロフィール】
山脇由貴子(やまわき・ゆきこ)/1969年生まれ。横浜市立大学心理学専攻を卒業後、東京都に心理職として入都。児童相談所に心理の専門家として19年間勤務。現在は家族問題カウンセラーとして活動している。

※女性セブン2021年3月25日号

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