2人一緒のカウンセリングで気持ちの変化を確認する
美紀子と隆弘に一緒に来てもらうことにしました。夫婦2人での話し合いではお互い感情的になってしまい、うまくいかないだろうと思ったのと、美紀子が言いたいことが言えないかもしれない、と思ったからです。私が同席する場面で、隆弘は自分の思いを伝え、美紀子は自分の言いたいことを言う。それが必要だと判断しました。
隆弘は、美紀子に対して浮気を認め、
「ちゃんと関係を終わりにした。もう二度と会わない。本当に申し訳なかった」
と深々と頭を下げて謝りました。美紀子に気持ちを尋ねると、
「今は、まだ信じられません。正直、顔を合わせるのもまだ辛いです。許す気持ちにもなりません」
美紀子は隆弘に、本心をはっきりと伝えました。さらに私は、美紀子にこれからどうしたいか、隆弘に伝えるように話しました。
「正直、今は、できるだけ夫とは顔を合わせずに生活したいです。息子の面倒も、夫に見てほしいです。今の私には息子の顔を見るのが辛い時があるので」
カウンセリングを通して美紀子はずいぶん強くなりました。自分の意思を伝えることができるようになったのです。でもそれは、隆弘にとっては辛いことでもありました。私は2人に提案しました。
「しばらく、2人でカウンセリングに通っていただいてはどうでしょうか? 気持ちの変化を確認しながら、どうすればまた一緒にやっていけるのか、相談していきましょう」
今の美紀子には、隆弘と話し合いたい、という意思はなくなりつつあるので、話し合う場面を設定する必要がありました。そして2人きりでの話し合いでは難しくても、カウンセリングを通せば、お互いの気持ちを受け入れられるものです。私は美紀子が心を休ませる時間が必要であることも隆弘に伝えました。
「美紀子さんの心が回復していくためには、心を休ませることが必要です。今、家の中ではそれは難しい状態なので、隆弘さんができるだけ育児をして、美紀子さんを休ませることに加えて、例えば週末は、隆弘さんが休める時は息子さんを連れて外に出かけるようにしてください。美紀子さんが1人で外出する日を作るのもいいですね」
私がそう言うと、隆弘の方から言いました。
「もし、妻が望むなら、週末をホテルで過ごしてもらっても構いません。頼めば、私の母も手伝いに来てくれることもあると思いますから、妻には土・日をゆっくりしてもらって大丈夫です」
隆弘は「それで、元に戻れるなら」と付け加えました。私から、週末に美紀子がホテルで過ごして家を空ける場合には、できれば昼食か夕食は、家族3人でとるようにお願いしました。急にお母さんがいなくなったら、子どもが不安になるからです。加えて、美紀子が家を空ける時には、子どもが安心できるように、「おばあちゃんのお手伝いに行ってるんだよ。でもちゃんと帰って来るから大丈夫だよ」などと伝えるようにもアドバイスしました。