とも伝えました。さらに、美紀子が息子を可愛いと思えなくなっている現実と、その原因が隆弘にあることも伝えました。美紀子は隆弘と息子への感情を以前のように戻すのは難しい、と思っていることや息子が傷ついていることもストレートに伝えました。隆弘の素直な反応を見るためです。

 隆弘は、最初は自分が責められていることに少し腹を立てている様子でしたが、美紀子の精神状態と息子への影響の話を聞き、表情が変わってきました。

「そこまで追い詰められているとは……。僕から見ると普通に生活しているように見えたので。家事もやってくれていましたし。でも、息子のことをそんな風に」

 愛情を注がれずに育った子どもの将来がいかに辛いものになるか、私はそこを特に丁寧に説明しました。それが隆弘の心に響き、息子の将来を考えてくれるかを見るためです。

「面倒を見てもらっていても、愛情を注がれていないのは子どもにはわかるものです。年齢を重ねていくうちに、精神的に具合が悪くなり、うつ病になったり、人との関係が作れなくなったり、人の顔色ばかり窺うようになったりします。自殺したい、という気持ちを抱く子もいます」

 それは避けたい。隆弘はそう言いました。そして、

「私は離婚したくありません。言葉にはしていないけれど、妻には感謝している面も、もちろんあるんです。そして一緒に過ごすことは少ないけど、子どもにも愛情はあります。離れたくありません」

 隆弘は「私は何をすれば?」と聞いてくれました。隆弘には努力しようという意思があったのです。

 私はまず、浮気を認め、美紀子に心から謝罪するように言いました。隆弘はこれにはかなり抵抗していました。

「一生、責められ続けませんか?」

「一生責められ続けるかもしれませんね。それでも、しなければ関係修復は不可能です」

 私が一生責め続けられるかも、とあえて言ったのは、楽観はしてほしくなかったからです。

 仕方ない、と隆弘は言ってくれました。さらに私は美紀子の今の精神状態を考え、多少仕事に影響があっても、育児を積極的に手伝うように話しました。

「それは、どうにかできると思います」

 隆弘は育児のための時間を作る約束をしました。

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