ある日、美紀子がお風呂から上がったことに気づかなかった隆弘が電話で話している内容を聞いてしまいました。
「『寂しい』とか『早く会いたい』って言っているのが聞こえました。これは浮気だな、と確信しました」
美紀子は、隆弘が寝ている間にスマホを見ました。
「ロックもかかっていなかったので、疑われているなんて思ってもいなかったんだと思います。もしくは、知られてもいい、と思っていたのかも」
隆弘のスマホの中には、特定の女性とのやり取りが残されていました。それも仕事の関係者で、美紀子も知っている女性だった、と言うのです。
「『早く会いたい』『こんなに長く会えないなんて耐えられない』などの他にも、いやらしい文面もありました。私、気持ちが悪くなってしまって」
それから、美紀子は隆弘に対して生理的嫌悪感を抱くようになってしまいました。
「正直、夫の顔を見ると、LINEの文面がフラッシュバックのようによみがえって、感情が不安定になりました」
その頃から、離婚は頭の中に浮かんでいた、と言います。美紀子は一度だけ、隆弘に浮気をしているのを知っていることを伝え、認めるように問い詰めたのですが、夫は「仕事の関係だ」「身体の関係はない」と否定し、それ以上の話し合いには応じてくれなかったそうです。
「ママは大好きだけど、悲しい気持ちになる」
さらに美紀子を悩ませたのが、育児でした。
「1回目の緊急事態宣言中は、幼稚園が休園になってしまったので、息子もずっと家にいるようになったんです。放っておくわけにもいかないので、一緒に遊んだり、お勉強をさせたりしていたんですが……」
美紀子は言葉を詰まらせながら言いました。
「子どもが可愛く思えなくなってしまったんです」