芸能

大根仁監督「コロナだからこそ描けた男女の距離感がある」

映画監督・演出家の大根仁氏はコロナ禍の新たな表現様式をどう考える?(イメージ)

大根仁氏ならではの、コロナ禍の新たな表現様式とは(イメージ)

 コロナ禍はフィクションの世界にも影響を与えた。漫画『相談役 島耕作』で主人公の島耕作が新型コロナウイルスに感染し、話題になった。しかし、現実世界をどこまでフィクションの世界に反映させるかは、難しい問題だ。リアルな世界を描くべきか、はたまた創作は自由であるべきか。コロナ禍の新たな表現様式について『モテキ』などを手掛けた映画監督・演出家の大根仁氏が語った。

 * * *
 フィクションの描き方は原則として自由であるべきだと考えています。たとえ現在が舞台でも、必ずコロナの影響を表現する必要があるとは思わない。

 ただ、リアリティを重視する作品の場合は別。昨年10月から放送した『共演NG』(テレビ東京系)は、「2020年現在のテレビ業界」が舞台だったので、視聴者に“現実”を体感してもらうためには無視するわけにはいきませんでした。

 コロナを取り入れたことで、かえってドラマの表現に“幅”を出すこともできました。

『共演NG』の第2話では、俳優の遠山(中井貴一)と元恋人の女優・大園(鈴木京香)のキスシーンがあるのですが、それをなんとか避けたい遠山が「キスは濃厚接触だから当然NGでしょ」とプロデューサーに詰め寄ると、「テレ東のガイドラインでは、キスシーンは本番1回ならOKです」と、撮影ガイドラインを盾に言い返される。

 他にも、電話をかけようとしたらフェイスシールドが邪魔になってゴミ箱に投げ捨てるとか(笑い)。新しいコメディ要素や風刺を盛り込むことができましたね。

 特に上手くいったのが、最終回で大園と遠山が成田空港で別れるシーン。2人が座る空港のイスがソーシャルディスタンスのため1席おきで、その微妙な距離感が、最終的に交わることのない元恋人同士の関係性をメタファー(隠喩)として表現できた。コロナ禍がなければ出ない発想でしたね。

 僕の場合、コロナが作品の質に悪影響を与えることはなかったですね。困ったことと言えば、いまはどの現場でもケータリングやお菓子コーナーがなくなったことくらいですね(笑い)。

※週刊ポスト2021年3月19・26日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

巨人を引退した長野久義、妻でテレビ朝日アナウンサーの下平さやか(左・時事通信フォト)
《結婚10年目に引退》巨人・長野久義、12歳年上妻のテレ朝・下平さやかアナが明かしていた夫への“不満” 「写真を断られて」
NEWSポストセブン
人気格闘技イベント「Breaking Down」に出場した格闘家のキム・ジェフン容疑者(35)が関税法違反などの疑いで逮捕、送検されていた(本人SNSより)
《3.5キロの“金メダル”密輸》全身タトゥーの巨漢…“元ヤクザ格闘家”キムジェフン容疑者の意外な素顔、犯行2か月前には〈娘のために一生懸命生きないと〉投稿も
NEWSポストセブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
バスツアーを完遂したイボニー・ブルー(インスタグラムより)
《新入生をターゲットに…》「60人くらいと寝た」金髪美人インフルエンサー(26)、イギリスの大学めぐるバスツアーの海外進出に意欲
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
ハワイ島の高級住宅開発を巡る訴訟で提訴された大谷翔平(時事通信フォト)
《テレビをつけたら大谷翔平》年間150億円…高騰し続ける大谷のCMスポンサー料、国内外で狙われる「真美子さんCM出演」の現実度
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
焼酎とウイスキーはロックかストレートのみで飲むスタイル
《松本の不動産王として悠々自適》「銃弾5発を浴びて生還」テコンドー協会“最強のボス”金原昇氏が語る壮絶半生と知られざる教育者の素顔
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン