ツアー再開の壁 ライブの現場で起きていること

ANTHEMのライブは「歌える」ことが特徴。メンバーには、ファンの心の歌が届いた

ANTHEMのライブは「歌える」ことが特徴。メンバーには、ファンの心の歌が届いた

 とはいえ、アーティストにとって、活動の再開も簡単ではない。これもまた、茨の道なのは事実だ。

 2020年はいうまでもなく、新型コロナによって音楽業界全体が多大なる影響を受けた。ロックフェスの中止・延期も相次いだし、ライブハウスの閉店も相次いだ。そして2021年になった今、海外のアーティストの来日は依然困難だが、国内アーティストはライブ活動を少しずつ再開しつつある。

 配信ライブなど、新しい楽しみ方も広がる一方で、2019年以前のように、観客を定員いっぱいまで入れて、歌い踊り、叫ぶようなライブは行えない。現状のルールでは、キャパシティの50%までしか動員することができないのである。この春には、昨年から延期となっていたライブやツアーがいろいろと開催されるが、アーティストを苦しめる事態はここでも起こっている。

「延期」となったライブの場合、チケットがすでに発売され、ファンもそのまま持っていることがあるが、そのチケット数が、現状のライブ可能なキャパシティを大きく超えていることがあるのだ。さらに、当初のチケット料金では採算が取れないために、値上げをせざるを得ないケースも出てきている。

 ANTHEMの場合もそうだった。

 アニバーサリーツアーは新型コロナ前から発表され、チケットの売れ行きも好調だった。しかし会場によってはすでに半分以上のチケットが売れていたがゆえに、一度払い戻しをしなくてはならないケースが出てきたのだ。払い戻しには手数料がかかり、再開催へのハードルを上げてしまう要因となるうえ、チケットの価格変更も行わざるを得なかった。

 ただ、値上げをしても尚、厳しい状況に変わりはない。最大でも会場の半分ほどしか観客を入れることができないのだから、本来ならチケット代を2~3倍に値上げしなくては採算がとれるはずがないが、そこまでの値上げは現実的ではない。結局、開催しても本来想定された収益に届かない可能性が高い。もっとも、ツアーをキャンセルすれば、会場費やその他のキャンセル料がさらにかかる。

サポート参加を経て、2014年に正式加入したドラマーの田丸勇氏。日本トップクラスのハードロックドラマーで、技術だけでなく、パワーと華が魅力

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 今回のツアーにおいても、いくつか苦渋の決断をしなくてはならなかった。ガイドラインに則って開催する場合、仙台の会場などは、フルキャパシティの2~3割までしか入れることができない。そのため、少しでも多くのファンに見てもらえるように、2日連続公演とした。アニバーサリーツアーは、歴代メンバーも参加するので、大所帯での移動となる。最も遠い札幌公演は断腸の思いでキャンセルせざるを得なかった。目玉の一つだった、グラハム・ボネットの招聘も、ビザの関係や、成田での14日間隔離ルールなどの関係から断念せざるを得なかった。

 ライブをしなくても、音源はリリースできるという意見もあるだろう。しかし、コロナ禍はレコーディングにも影響を与えている。ANTHEMは今年から新作のレコーディングを開始していたが、新型コロナ対策等の影響により、以前のような進行はできない。そこで2月に中断を決定し、アニバーサリーツアーに専念することにした。この判断を、柴田氏は前向きに捉えている。

「いろいろな事が同時進行ではないことで、ライブに集中できるという利点もある。紆余曲折がありながらも、ひとつひとつきちんと納得ずくでやりきる方が良かったのだと思うようになっていきました」

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