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すぐ傍にあるかもしれない「洗脳」 隣人や上司からの被害例も

悩みを分かってくれる親切な人だとばかり思っていた(イメージ)

悩みを分かってくれる親切な人だとばかり思っていた(イメージ)

 連日、ニュースだけでなくワイドショーなどでも取り上げられるような事件は、自分とは無関係な別世界の出来事だと思いがちだ。ところが、それは誰にでも起こりうることでもある。福岡県篠栗町で起きた5歳児餓死事件によってクローズアップされている「洗脳」も、あれほど凄惨な結末を迎えない程度に、ご近所や職場でたびたびトラブルとなっている。ライターの森鷹久氏が、支配欲から人を操る隣人、マルチまがい商法のために職場で洗脳の手法をつかった上司の存在についてレポートする。

 * * *
 ママ友に「洗脳」され、ついには我が子を死に至らしめた母親──。

 福岡県篠栗町で発生した事件が、連日ワイドショーなどで取り上げられている。ママ友との関係が「洗脳」と形容され、その響きから視聴者は「恐ろしい」と感じつつ、どこかで「自分は関係ない」と思っているのではないか。まさか自分や身近な信頼する人、パートナーが「洗脳」されるわけがない、と。しかし、意外なところ、そして思わぬところに無意識に、そして意識的に「他人を洗脳」しようとする人たちがいるという事実は、あまり語られない。

「コロナでテレワークになり、専業主婦の妻とも相談して都心から郊外へ引っ越したのが昨年の夏。自然も多く、家も以前の2倍以上の広さがあり、ここに永住してもいいかな、なんて考えていたんです」

 コロナ禍前まで都内在住だったITエンジニア・中村晃一さん(仮名)は、コロナの影響で完全テレワークとなり、念願だったという田舎暮らしをするため、妻と都会を離れ、見ず知らずの郊外の土地に引っ越した。周囲は農家ばかり、挨拶に行くと「都会からよく来た」と珍しがられ、間も無くすると「田舎暮らしの特権よ」と、近所の人が畑で採れた野菜などを差し入れてくれるようにもなった。理想の生活だと喜んでいたのも束の間、妻の様子がおかしいと感じたのは、引っ越してから2ヶ月ほど経過した頃だった。

「コロナの感染者が横ばいになり、週に1回、事務作業のために都内の会社に通勤するようになったのですが、帰宅すると妻が思い悩んだような顔でダイニングに座っていました。どうしたの? と聞いても反応が薄い。明るい性格だったのですが、田舎暮らしに疲れたのかな、くらいにしか捉えていませんでした」(中村さん)

 引越し直後、近所に住む親切な老婆が中村さんの自宅を訪れ、妻と雑談に花を咲かせていることは知っていた。当初、老婆は週に数回やってくる程度だったが、中村さんが不在の日には朝と夕方2回もやってきて「あそこのスーパーが安い」などと世間話をするようになり、妻が老婆宅を訪ねるようにもなっていたという。

 そして、妻の様子は日を追うごとにおかしくなっていった。

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