中国北京市公安局(警察本部)は3月中旬、昨年6月の中印両軍の衝突に関連し、インターネット上で「英雄烈士を中傷する言論を発表し、社会に悪影響を与えた」として、英国の大学に留学中である中国不動産開発大手「SOHO中国」の潘石屹会長の長男を指名手配して行方を追っていると発表した。さらに、「われわれは容疑者が海外にいようとも、必ず追い詰める。その前に、帰国して取り調べに応じるように」と求めている。
潘会長の長男・潘瑞氏(30歳)は、留学中に結婚し、豪華なパーティを開くなどの派手な行状で、一部で顰蹙を買っていた。米国に拠点を置く中国問題専門のニュースウェブサイト「多維新聞網」が報じた。
潘瑞氏は昨年6月23日、SNSの「微博(ウェイボー)」で、「聞いたところでは、少なくとも一つの野営地(の兵士)がインド軍によって生き埋めになった。鳥葬される機会はなさそうだ」と書き込んだところ、これを問題視する通報が警察に相次いだ。これ以前にも、潘氏はロイター通信が「少なくとも40人の中国人将校と兵士が死亡した」と報じた後、ウェイボで「彼らは名前を持っているのか。誰の子だ。親は誰だ」などと兵士を侮辱するようなコメントを書き込んでおり、中国外務省も問題視していたという。
父親の潘会長は1963年11月、甘粛省生まれで、1995年に「SOHO中国」を設立。海南島を出発点として深セン市や北京市などで不動産開発を行うなど成功し、総資産は250億元(約4000億円)、2020年の世界不動産富豪リストの68位にランクインした。
潘会長は息子を米国の有名大学に留学させるためにハーバード大学のほか、米英両国の名門大学に多額の寄付を行っており、潘瑞氏が英ウェールズ大学に留学しているのも、寄付のおかげだとの声もある。潘瑞氏は昨年、同大の中国人留学生と結婚している。
中国軍機関紙「解放軍法」は2月下旬、中印国境で起きた両国軍の衝突での中国軍の死傷者数について「4人死亡、1人負傷」で、死亡した4人の兵士について勲章や名誉称号を贈ったと発表。これを「虚偽情報」と書き込んだネットユーザーを6人について、中国の警察当局側は初めて「英雄烈士保護法」違反を適用して、6人を逮捕、起訴するなど、神経を尖らせていた。