聖カタリナ初代監督就任も「行き過ぎた指導」で謹慎

 地元・愛媛県の女子校である聖カタリナ高校が男女共学となることが決まり、硬式野球部を創部することになった。初代監督への就任依頼だった。

 さすがに即答はできなかった。すでに妻子がいる。現在教えている生徒たちのこともある。それでも「いつか公立高校の監督として結果を残し、私学の強豪からオファーが来るような監督になりたい」という目標があった。

 それは2014年に他界していた恩師・上甲監督の歩んだ道でもあった。宇和島東で実績を残した上甲は、私学の済美高校の監督として招かれ、ここでも日本一を勝ち取っている。済美も女子校を男女共学化した際の初代監督だった。

 悩み抜いた末に、越智は愛媛に行くことを決心する。

 1年目、「せめて野球ができる人数が集まってくれたらいいのだが」と危惧していた部員は、なんと36名が入部。この一期生たちで臨んだ最初の夏の愛媛県大会で、いきなりベスト8に進出する。オール1年生での快挙。「“まさかまさか”と言いながらも、“行けるんだったら行っちゃえ”と思ってました。さすがに甘くはなかったですね」と笑う。

 彼らが3年生になった2018年の夏には本気で甲子園を狙ったが、3回戦で敗退。その秋、二期生の代のチームが四国大会に出場を果たすが、初戦で明徳義塾に惜敗。創部3年で驚異的な成長スピードだが、県内では「まだ甲子園に行けないのか」と言われることもよくあったという。

 愛媛は野球どころゆえにファンの目線が高い。そして恩師の上甲が済美で成し遂げた、創部2年足らずで甲子園に初出場、初優勝を果たした記録がある。「普通ならありえない記録なんですが、愛媛県ではそれが標準になってしまいました」と越智は苦笑する。

 だがイケイケだったチームに、思わぬ形でストップが掛かる。2019年1月、越智ら指導陣の「行き過ぎた指導」を理由に、チームは活動を自粛。越智は謹慎となった。

 越智の高校時代、宇和島東は上甲監督が選手を猛練習で追い込むことで強いチームを作ってきた。練習試合で負けたら日付が変わるまでグラウンドを走らされたこともある。ノックの時には監督と選手が怒鳴り合い、ケンカ腰でやりあった。それでも、夜中まで練習した後、監督に連れられて行った屋台のラーメンの味は今も忘れられない。

 だが、今の時代、それはもう通用しない。もちろん越智が上甲のやり方をそのまま模倣したわけではないが、根底には昔ながらの「厳しさ」があった。そうした指導法を、もう一度考え直すための時間でもあった。

 その後、2019年9月に監督復帰。そして5期生となる今年のチームで、秋の愛媛県大会、四国大会を勝ち抜き、ついに初の甲子園を掴んだ。

聖カタリナ学園が初戦を迎える甲子園球場(時事通信フォト)

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