亡き長男のボウ・バイデン氏は真のプリンスだった(AFP=時事)

亡き長男のボウ・バイデン氏は真のプリンスだった(AFP=時事)

 なぜ父親が就任直後からコロナ対応やヘイトクライムで四苦八苦しているタイミングでこんな本を出すのか理解に苦しむが、タイトルが『ビューティフル・シングス』(美しきものたち)とされているから、不幸と悲劇を乗り越えてきたバイデン家の美しき家族愛を書きたかったのかもしれない。成功しているようには見えないが。

 若かりし日のハンター氏を知る知人はこうコメントしている。

「頭は良かったが、ボウ氏に強い劣等感を抱いていた。何をやっても兄には負けると思い込んでいた。小さい頃から煙草を吸ったり、ウィスキーをあおったりしたのも兄に対する反抗心だったのだろう。ボウ氏が死んだ後に義姉と男女の関係になったのも、兄に対する劣等感の裏返しだったのではないか」

「四十にして惑わず」は、ハンター氏には当てはまらなかった。「五十にして天命を知った」はずのハンター氏は、バイデン家の「ブラック・シープ」(面汚し)になり果てて、どんな天命を果たそうとしているのか。共和党の面々は、競うように本書を隅から隅まで読み、バイデン大統領への攻撃材料を探している。

 菅首相も、あまり素行の良くないと噂の息子を七光りで公職に就け、後にビジネス界に転じて父親の足を引っ張る不祥事を起こされた。4月16日の首脳会談では、二人は胸襟を開いて愚息の愚痴で盛り上がるのだろうか。

■高濱賛(在米ジャーナリスト)

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