国際情報

米制裁でもファーウェイが“粘り勝ち” 「別の食いぶち」で生き残りへ

(写真/AFP=時事)

予想外の好決算は市場を驚かせた(写真/AFP=時事)

 トランプ大統領がいなくなっても、まだまだ続く米中対立。その最前線に立つ企業が、中国通信機器・端末大手の華為科技(ファーウェイ)だ。最新決算から、米国の厳しい制裁に苦しみながらも、土俵を割らずに粘り強く戦う姿が見えてきた。中国の経済、社会に詳しいジャーナリストの高口康太さんが解説する。

 * * *
 3月31日、ファーウェイは2020年の決算を発表した。2019年5月から制裁が始まり、米グーグルが開発したスマートフォン向けOS(基本ソフト)のAndroid(アンドロイド)が使えない、独自設計した半導体部品を海外工場で製造してもらえない、一部の部品供給が禁止されるなど四面楚歌の状況だが、どっこい決算では“粘り”を見せた。

なんと、売上高は8914億元(約15兆円)と前年比3.8%のプラスを記録。毎年20%近い成長を続けてきたことを考えると大きく鈍化したことは間違いないが、マイナス成長が予測されていたことを考えると驚きだ。

“ファーウェイ離れ”が加速

 ファーウェイは、基地局設備などの電話会社部門、サーバーやスイッチャーなどの企業部門、スマートフォン、タブレット、パソコン、ウェアラブルデバイスなどの消費者部門という、3つの事業を持っている。

 稼ぎ頭は消費者部門だ。スマートフォンが原動力となり、消費者部門の売上は2010年からの10年間で15倍以上にまで拡大。韓国サムスン、米アップルに続く世界第3位のメーカーの座を獲得したが、米国の制裁によって厳しい立場に置かれた。グーグルのAndroidが搭載できなくては、海外市場では売れないからだ。

 筆者は、昨春発売されたファーウェイのスマートフォン「P40 Pro 5G」を入手したのだが、カメラや処理速度などのハードウェア性能に不満は皆無でも、Gメールやグーグルマップ、グーグルカレンダー……生活のすべてをグーグル先生にお任せしている身には使い勝手が悪すぎる。結局、今はサブ機という扱いだ。

 中国ではもともとネット検閲によってグーグル系サービスが使えない。そのため一般の中国人にとっては問題ないのだが、別の問題が生まれた。強化された制裁によって、独自開発したSoC(システム・オン・チップ、処理装置やセンサーなどをひとまとめにしたスマートフォンの中核部品)が、昨年9月を最後に製造できなくなってしまったのだ。現金なもので、「ファーウェイ支持!アメリカに負けるな」と意気盛んでいた中国人の間にも、ファーウェイ離れが始まっている。

 米調査企業IDCによると、ファーウェイの2020年スマートフォン出荷台数は前年比21%減の1億8900万台となった。ただし、年後半になるにつれ減少幅は拡大しており、第4四半期(9~12月)に限れば前年比43%減にまで落ち込んだ。2021年はさらに厳しく1億台を大きく割り込むことは確実だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

鮮やかなロイヤルブルーのワンピースで登場された佳子さま(写真/共同通信社)
佳子さま、国スポ閉会式での「クッキリ服」 皇室のドレスコードでは、どう位置づけられるのか? 皇室解説者は「ご自身がお考えになって選ばれたと思います」と分析
週刊ポスト
松田烈被告
「テレビ通話をつなげて…」性的暴行を“実行役”に指示した松田烈被告(27)、元交際相手への卑劣すぎる一連の犯行内容「下水の点検を装って侵入」【初公判】
NEWSポストセブン
Aさんの左手に彫られたタトゥー。
《10歳女児の身体中に刺青が…》「14歳の女子中学生に彫られた」ある児童養護施設で起きた“子供同士のトラブル” 職員は気づかず2ヶ月放置か
NEWSポストセブン
会談に臨む自民党の高市早苗総裁(時事通信フォト)
《高市早苗総裁と参政党の接近》自民党が重視すべきは本当に「岩盤保守層」か? 亡くなった“神奈川のドン”の憂い
NEWSポストセブン
知床半島でヒグマが大量出没(時事通信フォト)
《現地ルポ》知床半島でヒグマを駆除するレンジャーたちが見た「壮絶現場」 市街地各所に大量出没、1年に185頭を処分…「人間の世界がクマに制圧されかけている」
週刊ポスト
連覇を狙う大の里に黄信号か(時事通信フォト)
《大相撲ロンドン公演で大の里がピンチ?》ロンドン巡業の翌場所に東西横綱や若貴&曙が散々な成績になった“34年前の悪夢”「人気力士の疲労は相当なもの」との指摘も
週刊ポスト
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(インスタグラムより)
「バスの車体が不自然に揺れ続ける」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサー(26)が乱倫バスツアーにかけた巨額の費用「価値は十分あった」
NEWSポストセブン
イベント出演辞退を連発している米倉涼子。
《長引く捜査》「ネットドラマでさえ扱いに困る」“マトリガサ入れ報道”米倉涼子はこの先どうなる? 元東京地検公安部長が指摘する「宙ぶらりんがずっと続く可能性」
アドヴァ・ラヴィ容疑者(Instagramより)
「性的被害を告発するとの脅しも…」アメリカ美女モデル(27)がマッチングアプリで高齢男性に“ロマンス”装い窃盗、高級住宅街で10件超の被害【LA保安局が異例の投稿】
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト・目撃者提供)
《ラブホ通い詰め問題でも続投》キリッとした目元と蠱惑的な口元…卒アル写真で見えた小川晶市長の“平成の女子高生”時代、同級生が明かす「市長のルーツ」も
NEWSポストセブン
韓国の人気女性ライバー(24)が50代男性のファンから殺害される事件が起きた(Instagramより)
「車に強引に引きずり込んで…」「遺体には多数のアザと首を絞められた痕」韓国・人気女性ライバー(24)殺害、50代男性“VIPファン”による配信30分後の凶行
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《真美子さんと娘が待つスイートルームに直行》大谷翔平が試合後に見せた満面の笑み、アップ中も「スタンドに笑顔で手を振って…」本拠地で見られる“家族の絆”
NEWSポストセブン