材木とおしん

奉公先の材木屋では、朝5時に起きてから夜中に材木屋の若い衆が寝静まった後の風呂掃除をするまで休む間もなく働いた。大根飯をかっこむだけの食事も、つらくあたる女中も、芯から冷える川の水でのおしめ洗いも、おしんは故郷・山形の家族を思いながら耐え抜く

おしんは「女性の自立」の象徴だった

 髪結いとして働いているときに出会った田倉と結婚したおしんだが、その後も苦労の連続。子供を抱えながら働く姿は、当時注目されていた“女性の社会進出”を体現していた。

「それは決して社会的になにかリーダーになるとかではなくて、一市民として生きる女性が堂々と自分自身を確立していくプロセスです。浮かれた時代に、女性というのはどーんと構えて地に足がついているんだ、ということも伝えたかったのだと感じます」(前出・碓井さん)。

 男だらけの映画・脚本の世界にたったひとりで挑んだ橋田さん。苛烈なパワハラを受け、イヤというほど理不尽を味わったというが、「お茶くみをするために会社に入ったわけではない」と啖呵をきって10年勤めた松竹を辞めたとき、橋田さんの胸にあった信念こそ「私は、私の道を行くしかない」だったのだ。

 バブル崩壊、不況、震災、そしてコロナ禍と、暗く先の見えない時代に何度でも『おしん』に励まされるのは、「命以外すべて失うことを何度経験しても、人のせいにせず、自分自身の力で立ち上がる。その姿に勇気をもらう」(前出・碓井さん)からではないか。

写真/共同通信社

※女性セブン2021年4月29日号

関連記事

トピックス

ロシアのプーチン大統領と面会した安倍昭恵夫人(時事通信/EPA=時事)
プーチンと面会で話題の安倍昭恵夫人 トー横キッズから「小池百合子」に間違われていた!
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
「日本人ポップスターとの子供がいる」との報道もあったイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
イーロン・マスク氏に「日本人ポップスターとの子供がいる」報道も相手が公表しない理由 “口止め料”として「巨額の養育費が支払われている」との情報も
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
《会社の暗部が暴露される…》フジテレビが恐れる処分された編成幹部B氏の“暴走” 「法廷での言葉」にも懸念
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
長嶋茂雄さんとの初対戦の思い出なども振り返る
江夏豊氏が語る長嶋茂雄さんへの思い 1975年オフに持ち上がった巨人へのトレード話に「“たられば”はないが、ミスターと同じチームで野球をやってみたかった」
週刊ポスト
元タクシー運転手の田中敏志容疑者が性的暴行などで逮捕された(右の写真はイメージです)
《泥酔女性客に睡眠薬飲ませ性的暴行か》警視庁逮捕の元タクシー運転手のドラレコに残っていた“明らかに不審な映像”、手口は「『気分が悪そうだね』と水と錠剤を飲ませた」
NEWSポストセブン
金田氏と長嶋氏
《追悼・長嶋茂雄さん》400勝投手・カネやんが明かしていた秘話「一緒に雀卓を囲んだが、あいつはルールを知らなかったんじゃないか…」「初対決は4連続三振じゃなくて5連続三振」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《レーサム創業者が“薬物付け性パーティー”で逮捕》沈黙を破った奥本美穂容疑者が〈今世終了港区BBA〉〈留置所最高〉自虐ネタでインフルエンサー化
NEWSポストセブン
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
NEWSポストセブン