ウイルスの世界も「弱肉強食」
ほかにも、地方には都市部にはない「事情」もある。
「核家族化が進んでいる大都市とは違い、地方では3世帯同居も珍しくないため、若い孫から親や高齢者へという家庭内感染が広がりやすい。都会では隣同士でも挨拶程度しか交わさないことも珍しくないですが、地方では住民同士の人間関係が密接で、ご近所さんが長時間おしゃべりをしたり、住民が集まる機会も多い。しかも年齢層が上がるほど関係が濃厚です」(一石さん)
まん延防止等重点措置につながった今回の感染拡大は「第4波」といわれるが、地方ではこれまでに「大きな波」と呼ぶほどの感染は起きていない。そのため、これからの感染拡大が、実質的な「第1波」になる可能性がある。
「現時点では英国型の変異株が全国的に猛威を振るっていると考えられますが、ブラジル型や南アフリカ型もワクチンがききにくい可能性があり、まん延が心配されます。さらに新たな変異株の発生も起こり得る。ウイルスの世界も弱肉強食で、今後は強い変異株が生き残る可能性が高いと考えられるのです」(一石さん)
その予兆ともとれるのが、累計感染者数が291人(10日時点)と「全国最少」の鳥取県で、3月末に相次いだクラスターの例だ。倉吉市では3月29~30日に、社員寮に入寮している15人のうち11人が感染していることが判明した。
「鳥取市の飲食店でも、2次感染を含めて40人にのぼるクラスターが発生しました。その感染者たちからは『英国型』など既存の変異株は確認されなかったものの、変異株並みのウイルス量が検出されています。鳥取や感染がまん延している地方で新たな変異株が発生し、そこから一気に感染が爆発する恐れがあります」(一石さん)
現在、「ワーストランキング」で下位に入っている都道府県でも、いつ大阪と同じ事態に陥ってもおかしくないのだ。
※女性セブン2021年4月29日号