植物油を食べすぎている人は糖尿病になる
前述した「オメガ3系」の脂肪酸は「必須脂肪酸」といって、体内で合成できないため食べ物から摂取する必要がある。必須脂肪酸には「オメガ6系」も存在し、いわゆる「サラダ油」をはじめとした、大豆油やコーン油、ごま油などに豊富だ。
このオメガ6系の代表的な脂肪酸が「リノール酸」だが、飽和脂肪酸と比べてコレステロール値を下げる働きがあることから、ひと昔前には、リノール酸が豊富な植物油を「健康にいい」と大々的に宣伝する風潮もあった。
しかし、現代においては「積極的に摂るべきではない」という声もある。名古屋市立大学名誉教授で日本食品油脂安全性協議会理事長の奥山治美さんが話す。
「リノール酸が体内で変化すると、アラキドン酸という脂肪酸が生成されます。これは体内で炎症を起こす物質で、動脈硬化やアレルギーを促進することが指摘されています。
さらに、マウス実験では、糖質を過剰摂取した『高糖質食マウス』より、リノール酸を過剰摂取した『高脂質食マウス』の方が糖の処理をスムーズに行えないことがわかりました。糖尿病は、血糖値を下げるインスリンが効かなくなったことにより生じますが、高脂質食マウスの方が、インスリンの働きが悪くなっていたのです」(奥山さん・以下同)
つまり、糖尿病の予防として甘いものや炭水化物を制限していても、植物油をたっぷり使った料理を食べていては意味がないということだ。
「また、リノール酸を摂りすぎている母親から生まれた子供は肥満になりやすいといわれます。これはアラキドン酸が変化したホルモン様化学物質の影響と考えられます」
リノール酸の体への影響を目の当たりにしたと話すのは、植物油研究家の林裕之さんだ。
「私の娘は幼少時にアトピーの症状がありましたが、成長とともに落ち着いていきました。ところが、成人を迎えた後に再発して、ひどく悪化しました。あらゆる治療法でも改善せず、たどり着いたのが植物油を断つ『断油』です。
アレルゲンと判明した魚卵以外に、サラダ油やマヨネーズなど一切の植物油の摂取を断ちました。すると1か月も経たないうちに娘はアトピーが改善しただけでなく、冷え症や便秘、生理痛といった体調不良まで改善した。私も同じ食生活を行っていたのですが、40年以上、苦しんできた花粉症が治りました」
とはいえ、まねをするのは簡単ではない。成分表示を見ればわかるように、加工食品やレトルト食品の大多数に「植物油脂」が含まれている。
「不思議なものですが、『ノンフライ麺』と書かれた即席ラーメンの麺にも植物油脂は含まれていますし、チューブのわさびやしょうがにも入っています」(奥山さん)
成分表示のない外食では、さらに見分けるのが困難となる。林さんが言う。
「から揚げやとんカツ、天ぷらといった揚げものはもちろん、ファミレスのメニューもほとんどが油を使用していますし、中華料理は油がなければ成立しません。ノンオイルのものは焼き魚定食や刺身定食など、値段が高いものになってしまいます」
現代人が「普通の食事」をしている限り、植物油に含まれるリノール酸の過剰摂取から逃れるのは至難の業ということだ。