綾野の相手役の石原さとみ(写真/時事通信フォト)
実年齢と役年齢の差に見えるジレンマ
それでも、「恋愛は若さゆえの失敗が笑いや共感につながりやすい一方、アラフォー世代の失敗は笑いや共感につながりにくい」ことは変えようのない事実。本音を言えば、アラフォー俳優と同等クラスの実力と実績を持つ、若い俳優がいたらぜひキャスティングしたかったのではないでしょうか。
ちなみに、『恋はDeepに』で綾野剛さんが演じる蓮田倫太郎は35歳と実年齢より4歳若い設定で、『レンアイ漫画家』で鈴木亮平さんの演じる刈部清一郎は33歳と実年齢より5歳若い設定でした。演じる本人より若い年齢設定に制作サイドのジレンマが表れていますし、もし綾野さんと鈴木さんより若い俳優が演じていたら、主人公の年齢設定はさらに若くなっていたかもしれません。
離婚がテーマの『リコカツ』と『大豆田とわ子と三人の元夫』は、「アラフォー俳優が演じるラブコメでも、それほど違和感はないのでは」というある程度の計算が立ちます。しかし、王道のラブコメである『恋はDeepに』と『レンアイ漫画家』は、アラフォー俳優とのミスマッチがあるかもしれないことを承知で、彼らの実力と実績に賭けているのでしょう。
そのミスマッチを承知で制作・放送に至った理由の中には、「春には明るくポップなラブコメが似合う」という季節性や、「笑いでコロナ禍の重苦しさを吹き飛ばしてほしい」という思いもあるはずです。
放送前、永山瑛太さんは、「まずはポップな気持ちで見てほしいです。コロナ禍で大変なこともありますが、『リコカツ』を観て少しでも元気になったり、ほんの少しでも幸せを感じていただけるような作品にしたいと思います」とコメントを寄せていました。
実力と実績のあるアラフォー俳優たちがミスマッチをどう解消していくのか。それが今春のラブコメにおける、もう1つの見どころとも言えるのです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。