東大医科学研究所(がん防御シグナル分野)の中西真教授

東大医科学研究所(がん防御シグナル分野)の中西真教授

 国立長寿医療研究センター(愛知県)でも、老化細胞と呼吸器などの加齢性疾患とのかかわりを研究している。同ジェロサイエンス研究センター副部長の杉本昌隆氏はこういう。

「マウスを使った実験では、加齢とともに肺組織に蓄積した老化細胞を取り除くと、肺の機能が回復して若返ることが確認できました。現在は、老化細胞を標的にした呼吸器疾患治療法の開発を目指しています」

 いずれの研究もキーになっているのは“老化細胞”だ。

「現在、世界中で生体から有毒な老化細胞を排除する“セノリティック薬”の開発が盛んに行なわれ、欧米ではヒトに対する臨床試験も始まっています。ただ、現在報告されているセノリティック薬は副作用が強いものも多く、研究開発はこれからが本番と考えられます」(前出・杉本氏)

 まだ動物実験の段階の研究が多く、ヒトでも同じ効果が出るとは限らないが、期待は十分にあるという。

「今後研究が進めば、加齢に伴って起こる臓器組織の機能低下や、動脈硬化、高血圧、高脂血症、白内障、認知症といった老年病は治せるようになると考えています。実はGLS1の働きを阻害する薬は、特殊ながん細胞や末期がんの患者にも効果が期待され、米国で開発が進んでいます」(前出・中西教授)

 末期のがんにも効果があり、老化の予防にもなるとしたら、まさに夢の薬である。

※週刊ポスト2021年5月7・14日号

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