「黒ラベル」が若者に刺さった意外な背景
──「黒ラベル」は昨年まで6年連続販売増ですが、ビールが苦手という人が多い20代~30代の層でも「黒ラベル」のファンがたくさんいます。他社のビール以上に若年層を取り込めている要因はどこにあるのでしょうか。
野瀬:先ほども言いましたように、1990年代半ばから2010年までの15年ぐらいは、発泡酒や新ジャンルの商品が出てきて競争が激しくなったこともありますし、プレミアムビールの市場では競合商品の発売などもあったので、われわれは「ヱビス」に注力していた時期が長かったんです。
サッポロビール新社長の野瀬裕之氏
そんな背景もあり、「黒ラベル」の情報発信がほとんどできていませんでした。しかし、現在20代、30代の方にとっては、逆に「黒ラベル」が新鮮に映り、新しい商品に見えたのではないでしょうか。
缶のラベルデザインも、昔はちょっと野暮ったく感じ、年配向けの商品というイメージが強かったかもしれませんが、「大人エレベーター」の広告イメージも相まって、デザイン面でも若い方からかっこいいと思っていただけるようになったのではないかと思います。
これからもお客様起点で「黒ラベル」のブランド力や商品価値をさらに高めていきたいと考えています。
サッポロビールの野瀬裕之社長
【プロフィール】
野瀬裕之(のせ・ひろゆき)/1963年生まれ。1986年九州大学経済学部経営学科卒業後、サッポロビール入社。商品開発部やサッポロブランド戦略部等でグループリーダーを務めた後、2013年ブランド戦略部長、2015年サッポロホールディングス取締役戦略企画部長、2019年サッポロビール取締役常務執行役員を経て、2021年3月サッポロビール代表取締役社長(マーケティング本部長を兼務)に就任、現在に至る。
●聞き手/河野圭祐(経済ジャーナリスト)
●撮影/内海裕之

