「黒ラベル」の世界観を統一する試み
──CMの効果については、社内でも賛否両論あったのではないですか?
野瀬:静かに語らい合うおとなしい広告に映る「大人エレベーター」のCMは、やはり当初は社内でも賛否両論ありました。私自身、イケるという確証があったかといえば、スタート時はまだありませんでしたし、むしろ本当にこんな広告で大丈夫かな、というのが正直なところでしたから。
──結果的に、情緒価値に訴えた「大人エレベーター」のCM効果も大きく、「黒ラベル」の看板ブランドが見事に復活を遂げましたね。
野瀬:もちろんテレビCMの効果は大きかったわけですが、その一方で「黒ラベル」の機能価値も徹底的に追求していきました。
まず、ビールの中味に手を加えました。ビールは一度開けて時間が経過すると、どうしても酸化してしまい、美味しさが劣化してしまいます。そこで、ある程度の時間が経過しても美味しいビールであるにはどうしたらいいかを考え、辿り着いたのが現在、「黒ラベル」で一部使用し、当社が北米で品種育成している「旨さ長持ち麦芽」です。
手間暇かけてコストもかかる割に、お客様にはダイレクトには伝わりにくい要素ですが、生ビールの美味しさを突き詰めていく点は、今後もぶらさずにやっていきます。
また、細かな点ですが、ネーミングの統一も図りました。「サッポロ生ビール」なのか「サッポロ生ビール黒ラベル」なのかを巡り、社内では議論がずっと並行線だった時期が長くありました。飲食店に行くと、「サッポロ生ビール」としかお品書きに載っておらず、それでいて瓶ビールは「黒ラベル」と表記しており、統一感がまったくなかったのです。
──ネーミングがバラバラだと、確かに消費者には伝わりにくいかもしれませんね。
野瀬:飲食店のお品書きも店外ののぼりもすべて、同じアイコン、同じネーミングで「サッポロ生ビール黒ラベル」に変えてもらったんです。ジョッキグラスも、赤星のアイコンが入ったものとかバラバラでしたが、これも黒色ベースに金星という「黒ラベル」のものにすべて差し替えてもらい、飲食店などの業務用、家庭用商品を問わず、「黒ラベル」の世界観で統一していったわけです。
さらに、飲食店のビールサーバーの提供方法も変更しました。東京と大阪で実施した「パーフェクトビアガーデン」という「黒ラベル」の世界観を演出したホールと、「パーフェクトチェンジャー」といって、サーバーのノズルにひと工夫加えたことでクリーミーな泡持ちをアップさせました。
こうした諸施策とテレビCMの融合で、「黒ラベル」の良さが営業マンに伝わり、ジワジワとお客様にも伝播し、お取り扱いが増えて販売も伸ばすことができました。