意図的忘却で新しい自分になる
「日曜はがんばらない」(文化放送、日曜朝6時20分~)のゲストに、音声SNS「クラブハウス」で人気のジョン・キムさんを迎えた。韓国で生まれ、早くに両親を亡くした。日本に国費留学し、その後、アメリカ、ヨーロッパで学んだ。その経験を書いた『媚びない人生』(ダイヤモンド社)は数年前に話題になった。
彼は、日本に来る時、飛行機の中で要らないものをすべてリストアップし、それらを意識的に忘れ去る決意をしたという。意図的忘却である。
ぼくはこの話にとても共感した。コロナ自粛で内省の時間がたっぷりある今だからこそ、自分の生き方を振り返って、要らないものは意図的に忘れてしまってもいいのではないか。そんなぼくの意見に対して、キムさんも同意してくれた。
忘却は、新しい記憶、新しい人生のため第一歩になりうる。だとしたら、忘れることを怖がる必要なんてないのだ。とりあえず、水道の水の出しっぱなしだけ忘れなければ、ほぼほぼOKである。
【プロフィール】
鎌田實(かまた・みのる)/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。著書に、『人間の値打ち』『忖度バカ』など多数。
※週刊ポスト2021年5月21日号