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2021.05.17 07:00  週刊ポスト

人生最後の明暗を分ける 死ぬよりつらい「延命治療」の真実

医療における「最後の選択」をどう考えるか(イメージ)

医療における「最後の選択」をどう考えるか(イメージ)

【NEWSポストセブンプレミアム記事】

 眠るようにして穏やかに息を引き取りたいというのは、多くの人に共通する願いだが、なかなかそうはいかない現実がある。医療における「最後の選択」を誤ると地獄の苦しみを味わうことになりかねない。何が人生最後の明暗を分けるのかを見ていく。

「今でも『私が母を殺したのではないか』との罪悪感が拭えません」

 長年、介護してきた母親の最期をそう振り返るのは、エッセイストで教育・子育てアドバイザーの鳥居りんこ氏(59)だ。

 脳の難病を抱え、自宅近くの老人ホームに入所していた母の容体が急変したのは2017年のことだった。老人ホームの訪問医から突然、こう告げられた。

「お母さんの命はあと10日ほどですが、延命治療をしますか?」

 鳥居氏が続ける。

「医師によれば、入院させれば延命できるとのことでした。いきなり、『どうしますか? 決めてください』と答えを迫られたのです」

 母との別れは少しでも先に延ばしたいが、病院に移れば、体中を管につながれて寝たきりになる可能性が高い。悩んだ末、鳥居氏は事前に母が延命治療を拒否する意向を示していたこともあり、「治療を受けない」という選択をした。

 しかし、鳥居氏の母が迎えたのは、穏やかとは言えない最期に見えたという。

「数日が過ぎたあたりから、看取りのために一滴の水さえ与えられなくなりました。施設長からは『誤嚥して肺に水分が入ると、“溺れるような苦しみを強いられる”』と説明されました。会話はもうできない状態でしたが、すごく苦しそうで……。私は何もできず母が干からびていくのを待つしかありませんでした」(鳥居氏)

 鳥居氏の母はその状態で、約1か月間生きた。何度も「救急車を呼んで病院に入院させたほうがいいのでは」という思いに駆られた。「延命治療をしない」ことが「苦痛がない死」とは限らないことを知ったという。

喉を切開して呼吸器を

 では、看取る家族に対して苦しい決断を迫る「延命治療」とはどういうものなのか。終末期医療に詳しい長尾クリニック院長の長尾和宏医師が解説する。

「病気や事故、老衰などで回復の見込みがなくなり終末期、つまり“人生の最終段階”と判断された患者の命を少しでも延ばすために病院などで行なう医療処置のことを指します。様々な処置がありますが、口から栄養を摂ることが困難な患者への『人工栄養』、腎不全の患者への『人工透析』、呼吸困難な患者への『人工呼吸』が3大延命治療と呼ばれます」

 このうち人工栄養には、胃に開けた穴から直接水分や栄養を注入する「胃ろう」や、鼻からのチューブを通して栄養剤を胃袋に流し込む「経鼻胃管」、水分や電解質を点滴や注射で入れる「輸液」などがある。

 自力で呼吸ができなくなった時、人工呼吸器を装着する際には、気管内挿管または喉を切開して管を入れる「気管切開」という処置が必要になる。こうした延命治療が終末期の患者にとって「苦しみ」になることがあると長尾医師は説明する。

「欧米では、老衰で口から食べられなくなった高齢者に無理やり食事介助したり延命措置を施したりすることは、“虐待”と考えます。

 それでも日本では、家族からの訴訟リスクを回避するために延命治療を勧める傾向にあります。しかし終末期に過剰な治療を続けると、患者の苦しみは増すばかりです」

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